ささ←くう
好きだと自覚した、時既に遅し。恋を患う、なんとも煩わしい感情に酷く苛立った。きっかけを探る、不意に交差する視線にヤツを無意識に目で追っていた事も知る。なんて日だ、嗚呼糞。舌を打つが、脳内は至って冷静だった。こんな感情に振り回されてなるものか、ってのは僅かながらの抵抗だ。薄っぺらい笑みに感じた少しの違和感。ヤツの身振り手振りが全て、嘘っぱちだってのに気付いた時から気になって仕方がなかった。空気を読む、笑いを取る。手前ェはその笑みの下にどの面下げて、何を抱えてやがんだか。知りたい欲は、厄介な感情を生み出しては募りゆく。全てを見透かす、見透かしたかのように言葉が口から零れ出た。

「拗れてんなァ、しんどくねェんかよ」

交わる視線に真正面から、堂々と。何言ってんだコイツ、とか。何の事だかわからなくとも、とぼけようがはぐらかされようがどうでも良かった。が、ヤツはそれらをする事はなく驚いたように、その目を見開く。見たことの無い面だ、そんな顔出来たんだなってくらいの。

「…何言うとんねん、アホンダラ」

詮索すんな、ってか。一瞬睨み付けられたその眼差しに、背筋がぞわりと粟立つ。その顔を、もっと。歪ませたい、見たいって思うのは、好きだとかいう感情にしちゃあずっと厄介なものかもしれない。ざまーみろ、心の内で呟いた。



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