(寂)←乱♀
『ぼくあれが欲しいなあ』

などとそれをねだったのは最初で最後の一度きりだった。きらびやかな装飾なんていらない、いたってシンプルな銀のリングはあの頃の自分を満たすには十分な代物だった。華やかな衣装を身に纏う必要はない、ただ『証』が欲しかっただけ。…少なからず愛した男からの贈り物は、今となってはかろうじて自分をこの世に繋ぎ止める為の楔になりつつあるような気もするが。だが決してそんな事はない、自分はあの男が嫌いなのだ。嫌いで嫌いで仕方がない、殺したいほど愛した男。

「…ぼくもばかだなあ」

一生、死ぬまで手放せない。いつかあいつの隣で生きれたらなんて感情、どこかに捨ててしまえればいいのに。銀のリングにキスをしながらあの男を想う。ただただそれが悔しかった。



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