ベリグラ
永遠を誓った人が死んだ。婚儀の最中であった。真っ白な純白のドレスは真っ赤に染め上げられていて、回りを見渡せば見知った人達は皆どろどろの肉の塊へと変貌していた。そのなかにたたずむ一人の影に、言葉すら出せない僕はパクパクと口を動かす。それは恐怖や緊張感からではなく。ただ、懐かしい面影にあり得ない、という感情だけで。

「…ベリアル」

やっと出てきたその影の名前に、戻り行く記憶に想いを馳せる。未練と絶望の中、あの日滅んだ僕にそいつはにんまりと笑みを浮かべる。「特異点」と懐かしい声音に相変わらずだなあと笑う僕は、端から見れば花嫁に先立たれた憐れな花婿でしかないんだろう。



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