勝デク
『最近痛覚が鈍くなってるみたいで』などとほざいたらしい、当の本人の口から直接聞いた訳じゃないそれは酔った切島がうっかりと言わんばかりに漏らしたもんだ。上鳴が「あ」と心当たりでもあるような素振りの後目線を反らしたのを見逃さない。胸ぐらを引っ掴んで無理矢理聞き出したのは昨晩の事だった。

『二人がルームシェアとか未だに信じらんねぇよ』

けたけたと笑いながら寝落ちる寸前、切島は独り言のように呟く。散々言われ続けたそれに反論する気力はもはや存在しない。2年は経ってんだ、いちいち反応すんのも疲れんだろ。酒の味も覚えた、デクとはそれなりに、だ。卒業前から付き合ってんのなんか誰も知らねぇ。周りに言いふらすもんでもねぇだろ、俺とデクの問題だからな。

『かっちゃんには、言わないで』

申し訳なさげに言う顔が浮かぶ、どうせくだらない理由でんな事言っとんだ。大事な人だから、心配させたくない。そういう事じゃねぇ、それを未だに理解しないデクには腹が立つ。手遅れになったら、なんて思うのは今に始まった事じゃない。それこそ付き合う以前からデクとセットで付いてくるオプションみたいなもんだった。心配させまいとする行為が裏目に出る、だからあいつの側でそれを監視せざるをえなかった。その為の『ルームシェア』だった。だから尚更腹が立つんだ。結局、意味なかったんだからな。

「糞デク、テメェはいつもそうだ」

『まだやれる』だとか、『諦めない』だとか。平和の象徴である前に自己管理くらいしっかりしやがれってんだ。嗚呼苛々する、腹立たしい。よりにもよって俺に言うなだと、ふざけんな。



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