ジャンエレ♀
誰よりも死に急ぐ奴だった。そう、誰よりも。まあ前世の話だけどな。今生は随分大人しくなったんじゃねえか、って思う。俺の好みドンピシャってくらいには、まあ、うん。前世の想い人であったミカサに関しては言うまでもねぇ。あんなのが隣にいたんじゃ誰も近寄るどころか瞬殺だ瞬殺。あれは確実に眼力で人を殺せる、だからこれは前世に馴染みのある俺の特権だ。ちゃんと許可は取ったぞ、まあ無事で済む訳ねぇけど。本気だって伝えたら納得してくれた、んだよな?こうして無事に生きてるんだし。傷だらけでかっこつかねぇし、コイツが心配するくらいだから相当なんじゃねぇかな。そんな事あどうでもいいんだが。…まあ、その、なんだ。

「け…っこんを前提に付き合ってくれ、ないか…?」

小さな手に思わず驚く。女に生まれ変わっても中身は『エレン』に変わりない、はずなのに。こんなに、こんなに細いのか。力入れたら折れちまうんじゃねえかって。散々喧嘩した、触れたのはこれが初めてだ。…いや、一回肩を掴んだ事はあったな。それが最初に、コイツが女に生まれ変わったって認識した瞬間だったんだ。認識して、意識して…好きになったんだ。エレン相手に、わかってんのに。それでも好きになったんだ。

「好き、なんだ…エレン」

じんわりと染まる頬の赤が愛おしい。抱き締めたいのを堪えていたら俯いて、かと思えば俺の胸に頭を押し付ける。握った手は離さない、心なしかエレンの胸に当たっている気がする。とんだ煩悩だ。

「…お、おれも好き…」

小さな声が耳に届く。夢だったら確実に泣くが現実だ。そう、現実だ。嬉しさのあまり気絶しそうになるのを堪えながら、俺の方が「よろしくお願いします」と呟いた。



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