帝幻♀
「私結婚詐欺にあいまして」
「は?」

指にはめたそれを空にかざし、見つめながら独り言のように呟く。

「貸したお金は増えるばかりで一向に減る気配もなく、それどころかツケやら倍にして返すやらそればかり…貰った婚約指輪なんてこんなオモチャの安物で」

本当に私を養う気なんてあるんでしょうか?クスリと指輪に唇を落としながら目の前の男に微笑みかける。ばつが悪そうに目線を泳がせるものだから、つい、怒った振りをしてしまう。

「帝統あなた、わかってます?」
「いや、その…」
「これでは他の人に目移りしてしまうのも時間の問題ですよ」

まあそんな気無いんですけどね。ただ、ついた嘘に嫉妬してくれる姿を見たかったから。などと思った事を瞬時に後悔する。彼は酷くご立腹のようだった。

「それは無ぇ」
「おや、どうしてです?」
「そんな気あるならそれ、捨ててんだろ」

傷ついた表情で、帝統は指輪に目を落とす。「いつか本物を渡すまでの間、持ってろ」だなんて強引に渡された日を思い出すだけで笑みが溢れるくらいには、私あなたの事が好きなんですけどねぇ。

「ふふ、捨てませんよ」
「わかってるっての」
「ええ、待ってます、ずっと…あなたを」

そう、ずっと。生涯あなただけを愛すると誓いましたので。そう言えば帝統はとても嬉しそうに私を抱きしめる。あなたを選んで良かったと、その時を待ちわびて。私は今日も、彼の背にゆっくりと腕を回すのだ。



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