デュエス
朝、昼、夜。毎日、毎日。ここまでくれば嫌でも自覚する、考えない隙もないくらいに四六時中同じ人間の事ばかり考えていた。寝ても覚めても授業中も、直ぐに顔に出てしまうせいでまともに顔も見れない。面倒だが、勢いでどうにかなる程簡単な話でもなくて。どうにかしたい、しなければ。今後の為にも、このままじゃ、

「デュース?」

駄目なんだ。身体が熱い、昔の自分が蘇るような、ギラギラした感覚がする。照れるような素振りを見せればいいんだろうか、こんなにも手に入れたいヒトが目の前にいるのに?欲しいモノは力ずくで奪ってしまえばいい、いつかのダチが言っていた。先輩に誑かされた彼はどうなったんだろう。そんな事はどうだっていい、今の方が大事だ。優等生になろうとしたのに、所詮本質は変わらない。真っ当に生きるんだ、たとえ一度道を踏み外したとしても。そう、決めたのに。

「…エース、」
「お前…やっぱり」
「僕は、俺…は」
「うん、大丈夫だよ」

優しい温もりに包まれる。エースが僕を抱き締めている。エースが、僕を。ああそれだけでおかしくなりそうだ。耳鳴りがする、頭が痛い。エースの肩に噛み付いた、血の味が口の中に広がる。痛みに耐えながら、エースは僕を抱き締めたままだ。離れたくない、離したくない。このまま肩を食い千切って、こいつの一部を僕のナカに取り込んでしまいたい。そんな事ばかり考える、まるで自分じゃないみたいだ。エース、エース。お前が欲しい、お前が良いんだ。なあ、エース。

「…っバカデュース、のまれんな」
「あ…?」
「お前はお前だろ」

肩に血が滲む、爪が食い込む。目の前のエースは血塗れだ。僕のせいで。僕の、せいで…?

「…っエー…ス…?」
「はは…やっと正気になったかよ…」
「僕は、なんて事を…」
「惚れ薬にグール化の薬とかお前才能あんじゃねーの?…ったく、ホント、マジビビった…」

力の抜けたエースの身体を抱き締める。思い当たるのは3日前の錬金術の授業だ。そんな物作った覚えはないのに、けど目の前の現状が真実だ。エースは苦しそうに笑っている、僕のせいで自分がこんな目にあっているのに。大丈夫を繰り返しながら頬に触れてくる、その手はとても弱々しくて。

「…おかえり、デュース」
「た…ただいま…エース」

あんなにも欲しいと願った感情が紛い物だと思いたくなかったのに、胸に溢れるのは罪悪感ばかりで。それでもエースの笑った顔が綺麗だと思うのは、嘘じゃないんだと信じたかった。



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