シゲサト
鈍いなあ、などと思いながら。久々に会う幼馴染みに苦笑いをして軽く手を振る。

「やあ、サートシ君?」

昔の名残で思わず呼んだ名前に思わず口を塞ぐが手遅れで。今度は彼が苦笑しながら駆け寄ってくる。

「元気だった?」
「お陰様で、君も元気そうで何よりだ」

和やかに、自然に。こんな風に会話出来る日が来るなんて思わなくて。互いに大きくなってしまったんだなと感慨深くなるのも束の間に。抱いた想いは相変わらずで、つい構ってしまいたくなる衝動は抑えきれずに行動に出てしまう。

「シゲル?」
「え……っと、いや、ごみがついてたんだ」
「そっか、サンキュー!」

伸ばした手は髪に触れ頬を撫でる。やっぱり鈍いなあ、と二度目の苦笑いをした。

「(会いたかった、はずなのに)」

どうにも調子がでない。何を話そうか、積もる話は山ほどあるはずなのに。

「シゲル」

呼ばれる名前に顔を上げる。愛してやまない君の事が大事なんだ、誰よりも。そう言えたらいいのに、やっぱり言葉が出てこない。「鈍いなあ」、そんな声が聞こえる。「オレだってずっと会いたかったのに」、なんて。

「…サトシ、」

そんなの、僕の方こそ。我慢出来ずに体が動く。抱き締めるのは、これが初めてだった。



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