ベリグラ
嫉妬する前に相手が消えた。いや、俺がヤったんだが。命の灯火なんざ簡単に消しちまえる、人間てのは軟弱でか弱いもんだ。辺りを見回す、部屋の中心で返り血に染まった純白のスーツを纏う男と目が合う。姿も形も、面影は残るが魂だけは変わらない。俺を覚えてるかい、『特異点』?。とち狂った俺の存在なんて今生に似つかわしくない。天使、悪魔なんてものは架空の存在に成り下がっちまって信じる人間なんてのは宗教や神に縋る信者ばかりだ。…だから覆っただろう、その思考が?神父でも生かしておけば『生存者』が勝手に言いふらすだろうが、まあ面倒だから皆殺しに越したことはない。恐怖に怯えた表情は見物だがアンタには似合わない、死んだ花嫁を抱きながら絶望に震えるだけでもう武器は構えないのか。…残念だなあ、興醒めだよ。

「…ベリアル」

魚のようにパクパクと動かした口から出た言葉に思わず目を見開く。今のこの状況で思い出したらしい、『特異点』はそれから笑みを浮かべた。

「特異点」

花嫁が事切れて狂っちまったのかい、それとも初めからそういった才能があったのか。ゴトン、と床に死体を転がして立ち上がる。血に塗れた教会に立ちすくむその姿はなんて美しいんだろうか。生者は君だけだ、とその手をとる。そのまま手の甲に口付けて左手の薬指を食いちぎってやった。



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