ど→(ひふ)
結婚だとかそんな大層な事をした覚えは無いんだが。職場の同僚に茶化されるのにも慣れた愛妻弁当は一二三の手作りだった。

「(…愛妻?)」

料理なんて出来ないぞ、同居を始めた当初に不満気にぼやいた事がある。一二三はそんなもの屁でもないと言わんばかりの勢いで「んなもんオレっちが作ればいーだけの事っしょ?ほら解決!」などと意気込んで見事に有言実行、今の状態に落ち着いているのだから流石と言わざるを得なかった。

「(はたから見れば愛妻弁当なのか…)」

今頃実感する『当たり前』は一二三がいなければ無かったものだ。当たり前、そうか当たり前だ。一二三がいるのが当たり前、なんで気付かなかったんだろう。未だに無邪気にオレを呼ぶ姿は昔から変わらない。人生の半分以上は一二三が隣にいる、俺にとっての『当たり前』。

「(…大切なんだなあ)」

自分が思った以上に、俺は一二三を想っていた。俺が死んだら悲しいと言った一二三、俺だってそれは悲しい事だ。出来る事なら同じ墓に入りたい、なんてそれは行き過ぎた愛情表現だろうか。同じ事を考えてたらいいのに、なんて。自覚したら止まらなかった。

「(一二三がいない人生を考えなかった俺が悪いんだ)」

結局はそこに辿り着く、今更考えたってどうしようもない事だが。…とりあえず手始めに、帰りに指輪でも買って帰ろうか。



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