ため息
午後の休日ほど暇なものはない、だなんてつくづく身にしみて感じた今日この日。俺は暇を持て余しながらベッドの上に仰向けになって天井を眺めていた。若干頭から落ちそうな位置で身体を反らし、頭に血がのぼって少し気分が悪い。このままだと死ぬかな、なんて思いながらゆらゆらと揺れる電灯の紐と天井を交互に眺めていたら、枕元の携帯が鳴る音がして頭を上げる。液晶ディスプレイを確認するのも億劫で、そのまま通話ボタンを押した。


「はいはい尾野倉ですが何かー」


陽気に言えば、虚しさだけが部屋に残る。自分しかいない部屋というのは寂しいものだ。


『よう、暇人』
「うげっ、遼かよ」


声だけで認識出来る電話の相手は俺の天敵麻之井遼。嫌な奴からかかってきたもんだ全く。


「…で、何だよ?」
『暇だ』


…なんだこの自己中野郎。普段からどや顔かましてるくせに何様のつもりだ。


「生憎俺も暇なんでね、お前の暇潰しに付き合ってる暇は無い」
『…お前は随分と矛盾した頭をしてるんだな』
「あ゛?」


休日までこいつに厭味を言われなければならない理由はなんだ。用がないなら切れや馬鹿野郎。


「用が無いなら切るぞ」
『…清平』


不意に呼ばれた名前に心臓がドキリと高鳴る。か細い声音はずるい。


「…遼?」
『………声、聴けてよかった』
「は?」


プツッ、ツーツー…


途端に耳に響く電子音。暫く動く事が出来なくて、我に返った時にはこのどうしようもないモヤモヤした感情をため息といっしょに吐き出せたらいいのにだなんてそんな事を考えながら、一人静かにため息を吐いた。


「…恥ずかしい奴」


どうせならもっと早くに電話してこいよ、という独り言は空気に溶けた。



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