背中
原チャリに跨がる津谷の後ろで、背中を預けて空を見上げるオレ。時速0kmのそれはゆっくりと、歩くよりも遅い速度で津谷の足によって進んでいく。


「原チャリの意味無ぇ…」
「いいだろ、ゆっくり行こうぜ」
「平和だ…」


側からみれば私服のヤンキーと眼帯の不良にしか見えないだろうオレたち。だけど今は戦意喪失中だから人畜無害だぜ〜なんて呑気な事を思いながら更に津谷に体重をかける。


「重い」


さすがに文句を言ってきたそいつはいったん足を止めて。振り返ろうとするがそうするとオレが落ちると予測してか、ため息を吐くだけ。


「…重い」


もう一度同じ言葉を呟いて。諦めたのか、また足を進め始める。


「津谷」


合わさる背中はとても心地がよくて。気を抜くと眠ってしまいそうになる。


「何?」
「…お前の背中はあったかいよ」


緩む頬は自然に。津谷は歩みを止めずにそうか、と一言。


「お前の背中だってあったけぇよ」


重いけど、なんて笑うそいつに、オレもそうか、と呟いて。今度は全体重を預けてやった。



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