キョウヘイとゼクロム
「ゼクロム…?」


目の前にいるのは伝説のそのポケモンで。目を見開いてそいつを凝視する。真っ黒な身体が印象的で、バチバチと電気が流れていて。本能的に、嗚呼こいつはヤバいと身震いした。


「でも、お前は確か…」


だけどNさんが言うに、こいつは二年前にトウヤさんというトレーナーとどこかへ行ってしまったのではなかったのか?だからNさんはこいつとトウヤさんを捜しているんじゃ。…なのにこいつはここにいる。なら、


「…トウヤさんは、どこに…?」


まさかそんな、トウヤさんがこのゼクロムを手放したとでもいうのか?そんなはずはない。だってそうだとしたらNさんはどうしてその事を知らないんだ。


「どうして君がいるのに、トウヤさんはいないんだ?」


言葉がわかるとは思っていないけど、もしかしたらって。言わずには、聞かずにはいられなくて。そしたらなんだか、ゼクロムが悲しそうな目をした気がして。


「…ゼクロム」


なんだか自分まで悲しくなってきて。目の前のそいつを呼びながら、流れそうになる涙を堪えながら、ゆっくりと手を伸ばす。


「…Nさんがトウヤさんに伝えたい言葉を、ボクは君に伝えるよ」


微笑んで、愛しんで。なんとも言えない感情に背をおされながら。


「君に出会えてよかったよ、ゼクロム」



――ありがとう



そう言ったそのあと、わからないけどなんだかゼクロムに、トウヤさんの面影をみたような気がして。会った事はないけれど、きっとゼクロムはトウヤさんが大好きなんだ。そう思うと嬉しくて、早くトウヤさんに会いたいなって思った。



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