「ん、」


かぷりと、Nが首筋に噛み付く。鋭い痛みがしたそこから、途端にじわじわと痛みが広がった。


「N」
「なんだい」
「痛いよ」


多分血が出てるんじゃないかな、そう思って首筋に指で触れるとやっぱり血がついてた。なのにNはそんなオレを見て嬉しそうに笑う。


「なんで笑ってるのさ」
「アト」
「アト…痕?」
「うん」


なんだか嬉しくってね、と。…多分所有印とかそんな感じだからかな。やたら嬉しそうなNとは裏腹に、だけどオレは全然嬉しくないんだけどね。


「(すぐ消える痕なんて、いらないよ)」


だからいっそのこと消えない痕を刻みつけて欲しいのに。オレから離れないように。どこにも行かないように。深い深い痕を。


「トウヤ?」
「N、もっと」
「え?」


今度はオレがNの首筋に噛みついて。嗚呼、このままノドを噛み千切ってしまえばオレのものになってどこにも行かないかな、なんて思いながら。


「(だからどこにも行かないでよ、N)」


そう、心の中で呟いた。



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