あの日言いそびれた言葉を
「メリークリスマス」
「!!?」


見知った姿をライモンシティで見かけて声を掛けた。ベンチに座り込んでいたそいつは薄緑色の髪を揺らして顔を上げる。まるでハトが豆鉄砲食らったようなその表情がとても可笑しい。


「…トウヤ?」
「どうも」


素っ気なく返事をして、空いた隣に腰をおろす。白い息を吐きながら、無言で雪がちらつく空を見上げた。


「…驚かないの?」
「何が?」
「僕がここにいる事」
「あー…うん、驚いてるよ」


驚いているには驚いているんだ。だってこいつに会うのはあの日以来だから。もう会えないと思っていたのにいきなりの再会だし。でもどう反応していいかわからないんだよ。喜べばいいのか、泣けばいいのか。いっそのこともう会えなくてもよかったとさえ思っていたんだから。


「…ねぇ、N」
「うん?」
「久しぶりに、観覧車にでも乗ろうか」


でもせっかくの再会だ、久しぶりに少し世間話でもしてみたい。これも何かの縁、きっとこれはサンタからのプレゼントなのかもしれない。


「…懐かしいね」
「だろ?」
「…トウヤ」
「何?」
「…好きだよ」


目線を空から外し呟くそいつの方を見ると、Nはあの日のように儚げに微笑していた。その表情に一瞬目を奪われて目を見開くけれど、それからすぐにオレも頬を緩める。


「…うん、オレも好きだよ」


あの日言いそびれた想いを伝えて。胸のつっかえが取れたかのように、オレは笑った。



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