オ←デン
『好きだ』って、言えば満足するのか、言われれば満たされるのか。生涯到底知る由もないそんな事を口に出した、かもしれない。いつも通りの宅飲み、いつも通りの相手。酔えば全部忘れるんだったらそれでいいのに、多分オレもコイツもそんな事ない、面倒だ。
「…それって好きな子がいるって事か?」 「何聞いてそうなるんだよ」 「いやだって好きだって…」
好きかどうかは別の話なんだよ。蓋をするには溢れすぎて、諦めるには遅すぎて。墓に持っていくつもりの想いに、高鳴るどころか虚無感にさいなまれてる。生きているうちにコイツはオレのものにならないんだなあとか、コイツもいつか綺麗な嫁を貰うのかとか。色々考えるんだよ、オレだって。ポケモンバトルに心が満たされなかった日々より、ひたすらジムの改造に没頭したあの頃よりずっとずっと虚しい。
「…まあ好きだけどな」 「言わねぇの?」 「言わないよ」 「なんで」
知らないってのは時に残酷だ、お前だよって言えればいいんだけど。気付いた時には好きだった、好きで留まるにはもう手遅れだけど。だからもう諦めてるし、言う気もない。
「限りなくゼロに近い可能性に人生かけるほど出来た人間じゃないんだよ、オレ」
だって愛してるんだ、お前の事。
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