小ネタというか勢いで書く唐突文。
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勝手に増えます。





夏油
それはたとえば、彼らはどんな風に笑うんだったろうかなとか。どんな話し方をするんだったかな、とか。些細な日常の一部を切り取った風刺画のように、確かに手のひらにあった光景を。懐かしき、あの日々は確かに存在していたのだと、ふと脳裏に蘇ったそれに思わず嘲笑う。それは自ら手放したもの、それは自ら棄ててしまったもの。突如襲い掛かる、まるで刃を突き立てられたようなそれは長年感じる事の無かった痛み。忘れ難い記憶を、数多の呪霊と共に呑み込んでしまえればこの痛みも和らぐのだろうか。もう届く事はない、あの愛しい日々には到底抵抗する術を私は知らない。

「(愛しい、なんて)」

そんな事を考える心がまだ遺っていたのか、彼らと共に過ごした日々はどうやら私にとってはかけがえの無いものだったらしい。嗚呼なんて、反吐が出る。そんな思考に噎せ返るような吐き気は笑ってしまうほどの醜態だ。何を悔いる必要があるのか、何をそんなに引き摺ろうというのか。今のいままで片時も、自分の行動に負い目など感じた事は無いだろうに。

「…なんて、不様な」

淡い胸の痛みに彼らを想う。どう足掻こうが戻らない、戻るつもりもない。けれど確かにあったのだ、あの頃感じた短くも愛しい日々に想いを馳せる。





それは、まるで。






























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