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「ギャモン、腹減った」


あれ買ってよ、と街中で見つけたクレープ屋を指差す。そしたら隣を歩くギャモンは心底嫌そうな顔をした。


「あァ?腹減ったってお前な…もうちっと女らしくしたらどうなんだ」
「クレープだって女らしいじゃん」
「色気が無ぇ」


オレに色気なんか求めるな、仮にも付き合ってんだから彼女の為にクレープくらいいいじゃないか、と文句を言う。別にバッグや洋服やらを頼んでるわけじゃないんだからさ。


「甲斐性のねぇ奴」


完全にふてくされたオレはとっととギャモンを置いて歩みを進める。ブツブツとぼやいていたが、気がつくといつの間にかギャモンがいなくなっていた。


「んだよ…迷子か?」


甲斐性がないうえに迷子とか、マジあり得ねぇ。苛立って、だんだんと怒りが込み上げてくる。


「ほらよ」


しかしタイミングよく目の前に現れたクレープに、その怒りは爆発する事なく途端に消え去った。視界に広がる真っ赤ないちご。それを持つ手の主はギャモンだ。


「甲斐性が無ぇなんざ言われて、黙ってそのままでいる俺様じゃねぇぜ」
「…素直じゃねぇな、ツンデレか」
「ネギまぶすぞコノヤロウ」


とりあえずギャモンに差し出されたクレープを受け取る。こいつこんなナリしてこれ買ってきたのかって思ったら、なんだか可笑しくて笑えた。


「んだよ」
「別に」


両手で包み込むようにクレープを持って、小さく「ありがと」と呟く。「素直じゃねぇのはどっちだか」、なんて言うギャモンの声は聞かなかった事にした。


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