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とある日の夜11時も過ぎた頃。
臨也は自室のベッドに仰向けになりながら、ジッと天井を見つめていた。
何をするわけでもなく、ただジッと。


「…」


ちらりと傍らの時計を確認すれば、すでに日付の変わる直前である。
時間が経つのは早いものだと、臨也は再び天井に視線を戻した。


「(…あと30秒)」


頭の中で時刻をカウントダウンしながら目を瞑り、残り10秒になると目を開く。


「(10…9…8…)」


残り5秒となれば、静かに口を開いた。


「5…4…3…」


2、と言いかけたところで玄関の方から足音。
1、と言いかけたところでドアノブを掴む音。


バキッ


「…0」


0、と言った声と、ドアが破壊された音が聴こえたのはほぼ同時であった。
どたどたと聴こえてくる足音に耳を傾けながら、臨也は視線を音が近づいてくる方に向ける。
するとバン、と勢いよく開かれた部屋のドアから現れた人物と目が合った。


「…不法侵入なんだけど、あとドア弁償してよね」


さほど慌てた様子も見せない臨也。
クスリと微笑すると、目の前の男はああ、と呟いた。


「ほんと、馬鹿だよねぇ、シズちゃん?」
「あ゙あ゙?」
「玄関鍵開いてたのに」


そう言って無駄な出費だね、と笑う臨也。
静雄は舌打ちすると、ガシガシと頭を掻いた。


「るせぇよ、ごちゃごちゃ喋んなノミ蟲」
「だってほんとの事でしょ?」
「…くそ、無駄話してるうちに一分経っちまったじゃねぇか」


時計を確認しながら呟く静雄は、深く息を吐いてベッドに歩み寄る。
くわえていた煙草を枕元の灰皿に入れると、臨也の顔の横に手をついてジッと顔を覗き込んだ。


「臨也、」
「…なに?」


軽く頭を撫でてから、頬に手を添える。
親指で唇をなぞりながら、


「誕生日…おめでとう」


と呟いた。


「シズちゃんが私におめでとうだなんて…ていうか覚えてたんだ」
「手前でも一応恋人だからな」


厭味混じりに溢した臨也の言葉は、重ね合わせた唇の中に溶けてしまう。
触れるだけのそれを、離せば再び視線が交わった。


「シズちゃんてばやさしー」
「るせぇな…」


若干赤らんだ表情を背ける静雄。
臨也はそんな静雄を見て、クスリと笑う。


「シズちゃん、」
「…なんだよ」
「ありがと」


嬉しいよ、と言って頭を撫でると、静雄は臨也をきょとんとした様子で凝視した。
そして少し間をあけてから、関をきったように苦笑する。
そして自分を撫でる手を取り優しく握ると、


「手前はほんとに…」


と言って臨也の身体を抱きしめた。





5月4日





「誕生日プレゼントだ…どっか連れてってやる」
「いいよ、どこも混んでると思うし…シズちゃんがいてくれたらそれでいいよ」
「…そうか」


とりあえずケーキくらいは買おうと思った静雄であった。


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