log ←new old↓ 休日の午前中、ギャモン家に遊びに来た。ミハルちゃんは友達と遊びに行ってるとかでいなくて、家にはオレとギャモンの二人だけ。 …まあ、付き合ってんだから当たり前だけど。しかもこれで他の奴とか連れて来てたらぶちギレそうだもんな、こいつ。 「暇」 「パズル作ってやっから、それでも解いてろ」 それにしてもこいつと恋人らしい事を一度もした事がない。こうやってオレがこいつの家に遊びに来るのは、デートが出来ない代わりであるからで(まわりの奴らに知られたくないし)。だからほとんど毎回ギャモンの作ったパズルを解くだけで一日が終わってる。 「(いや別にこいつと何かしたいとかそんなんじゃなくて…)」 一応恋人なんだし、それらしい事もしたいとか思うわけで。…だって遊びに来ても何も無ぇとか、子供の「ちょっと○○ん家で遊んでくる!!」っていうのじゃあるまいし。 ギャモンは相変わらず無言でパズルを作ってる。ペンを走らせる音だけが静かな部屋に響いて、オレはそれを眺めていた。 ガタン そんな時、どこからか物音が聞こえた。 「…何だ?」 「多分隣だろ、最近越して来た」 「ふーん」 越して来た住人はどうやら新婚さんらしい。ギャモン家にも挨拶しに来たんだと、ペンを走らせたままギャモンは呟く。 ゴトン また物音がした。それにしても騒がしいな、なんて思いながら耳をすませていると、人の声が聞こえる。 『ちょっと、』 『いいだろ』 他愛ない男女の会話、かと思いきや途端にそれは、耳を塞ぎたくなるような声音に変わった。 「…なあ」 「…壁薄いから仕方無ぇ」 だけどそう言うギャモンも、すでにペンの動きは止まってる。妙な緊張感が流れた。 『あ、や…っ』 いくら新婚さんだからって、休日の、しかも朝から盛るのはどうかと思う。天気いいんだからデート行けよ、デート。心の中で呟くのとは裏腹に、声はどんどん激しいものに変わっていく。嗚呼、耳を塞ぎたい。 「…ちょっと、外の空気吸ってくる」 もう我慢の限界。そう言って椅子から立ち上がった。だけどギャモンが、 「待てよ」 オレをなぜか引き止める。 「…何だよ」 変に動悸が激しくなる。こいつが何を考えているのかわからない。表情を変えずにオレを一瞥して、ギャモンは立ち上がる。オレの前まで来ると耳元に顔を近付けて、低い声音で囁いた。 「こっちも、いっちょ対抗してみるか?」 そしてオレの身体を引き寄せて、抱きしめる。熱い。というか、動悸がヤバい。 「…アホギャモン」 変な対抗心燃やすなよ、とはなぜか言えなくて。とりあえず、こいつの背中に腕をまわしてみた。 「…っていう夢をみた」 「いいところで目ぇ覚ましてんじゃねぇよ、バカイトが」 「よくねぇよ、アホギャモン」 「あー…でもな」 「?」 「隣に新婚さん越して来たのは、マジだぜ」 ……とりあえず、正夢にならない事を願おう。 ×
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