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いつもとさほど変わらない仕事内容。
しかし町並みはいつもより甘ったるい雰囲気。
鼻につく匂いまでもが甘い。
甘い甘い甘い甘い。
どこもかしこも甘ったるい。
別に甘いものが嫌いなわけじゃない。
むしろ好きだ。
しかしこれはどうにかして欲しい。


「…トムさん、俺もう限界です」
「あー…まあ、そうだろなあ」


トムさんもそろそろ限界らしい。
少し考える素振りを見せたあと、よし、と言いながら頭を掻いた。


「んじゃ今日は、ここらで解散すんべ」


ひらひらと手を振りながら去って行くトムさん。
…声を掛ける隙もなかった。


「あっ」


トムさんの姿が見えなくなった直後、不意に耳に入る声。
振り向かなくても誰だかわかった。


「いーざー「はいこれっ!!」


声を遮られたその上に、口に何かを入れられた。
驚きながらも、それを噛み砕いてみる。


「…甘ぇ」


苦味の全く無い、甘ったるいお菓子。
これをチョコレートと言わずして何と言えるだろうか。


「シズちゃんの為に、甘いの作ったんだ」


頬を染めながら俺の為にとか…反則だろ。


「…臨也」


たまには、甘ったるいのもいいかもしれない。


「…ありがと、な」
「っ…シズちゃん顔真っ赤だよ?」
「うっせ、手前のせいだろバーカ」


まあ、今日くらいは一時休戦したってバチは当たらないだろ。


「臨也、手ぇかせ」
「えっ?…っ」


嗚呼、手を繋ぐのも悪くないな。
俺より細くて小さな手。
握り返す温もりがこんなにも温かい。
指を絡めると、心臓が高鳴った。


「(…やっぱり、好きだ)」


チョコのように甘ったるい関係になれなくてもいい。
だけど今日だけでも、繋いだ手を離さないでいたいと思った。



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