ほんの気まぐれで、スーパーに寄った。そこに売っていたある菓子を買った。
  それは今学校で流行っているチョコエッグだった。中には動物のフィギュアが入っていて、レアものを見つけるために一度に何個も買う友達もいた。自分も軽い気持ちで買ったのだ。チョコレートは好きだし、買ったことでみんなの話に参加できるのだから百円ちょっとなんて安いものだ。それだけの気持ちだったのだが――それがどうしたことだろう、少年は目を見張る。砕けたミルクチョコレートの破片の山の中、白い小鳥がよたよたと立ち上がっていた。だがその全身はよくあるあの甘い白いチョコレートで出来ている。しかし鳥は確かにうっすらと目を開け、弱々しく鳴き声を発した。手のひらに乗せても余るような大きさの鳥。
  戸惑いながらも、彼は小さな醤油皿に菓子で出来た小鳥を乗せた。カチリと硬い音を立てて小鳥は皿の上に収まった。それは少々硬いもののぴったりの大きさのベッドに見えたし、小鳥は気に入ったらしくうずくまって眠り始めた。
  それから奇妙な鳥は少年の机の上で生活を始め、時折皿から降りては首を傾げながら歩き回って転んだり、ピーピー鳴いたりした。彼を親と間違えているのか、甘えるようにすり寄ってくることもあった。何もせずとも日々元気に動き回る様子を見ると、餌も水も要らないらしい。鳥がやってきてから何日が経っだろうというある日、少年が部屋に入ると鳴き声の出迎えがなかった。皿を覗き込むと、鳥はつけっぱなしにしてしまっていた暖房で溶けていた。
  少年は皿を見てじっと立ち尽くした。それから手を伸ばして、皿を傾けて溶けたチョコレートを、元は小鳥だったものの残骸を飲み干した。
  彼は再び流行りの菓子を買った。それを大事に持ち帰り、部屋で一人木槌を使ってチョコレートの殻を割る。砕けたチョコレートの破片の山の中、翼を広げてくちばしを開いた格好をした、白いプラスチック製の小鳥がそこにいた。






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