気分は居眠りの君へ
下がっていく瞼を必死に抑え込み、ノートに向かう。
小鳥の囀りと暖かな気候、ゆったりとした口調で話す教師。その全てが子守唄となって六道を眠りへと誘う。眠ってはいけないという思いに反し、瞼は重くなるばかり。逆らっても無駄だと判断し、そっと目を閉じた。
授業の終わりを告げる鐘が鳴ったのにも気付かず、睡眠欲を満たし続けた。
「寝てやがる」
気持ち良さそうに寝息を立てる六道に、進藤は眉をしかめる。常に長い髪で隠されている目を盗み見ることも考えた。しかしそれには髪を退けなければならないし、それに成功したとして机に突っ伏している人間を起こさないように顔を上げさせることなど不可能だ。
「おいロクー。ロクちゃーん。ロクさん聞こえてますかー」
返答はない。何度呼びかけても返ってくるのは寝息だけ。周りからくすくすと笑いが起こり始め、いたたまれなくなってくる。これだけ呼んでも起きないのだから相当いい夢を見ているに違いない。起こすのは忍びないが、これ以上注目を浴びるのは六道にも悪い気がする。強めに肩を叩くと、六道の頭が揺れた。
「っわ!?」 「目、覚めたか?」
悪いな、と続け頬を掻く。目の前にはそんな進藤の姿があり、周りはちらちらと見ては笑いを零す。これをどう繋げていいか分からず、目を瞬かせた。
「……痛い」 「だから悪かったって! それに飯食うって言ってあったのに寝てるお前も悪い」
聞き覚えがないのも無理はない。今日は一度も進藤と会っていなかったのだから。同じクラスなのにおかしな話かもしれないが、不良と呼ばれる部類の彼には珍しいことではない。
「何で、いるんだ」 「はあ!? だからお前と飯をだな……」 「他にもいる。何で俺?」
進藤の明るい性格は自然と人を呼ぶ。たくさんの人に囲まれている彼を見るのは嫌いじゃない。素直にすごいと思うし、少し羨ましくもある。自分には絶対に真似できないことだからだ。
そんな進藤だから、わざわざ六道のところに来なくとも友人ならたくさんいるだろうに。理解できず首を傾げていると、進藤は屈託のない笑顔を作る。
「そりゃそうだけど、今日はお前と食う気分だったんだよ」 「……そう、か」
それきり口を利かなくなった六道に苦笑を浮かべ、早く来るようにと急かす。無言で立ち上がった六道の頬はほんのり赤みを帯びていた。
某交流サイトにて春海様にリクエストしていただいたものです。 進藤さんと六道さんをお借りしました。 正反対なお二人は想像しやすく書きやすくて妄想の輪が広がりました← 書いていてとても楽しかったです。 春海様、リクエストありがとうございました!
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