携帯をパチン、と閉じ深いため息を吐く。身を沈めるベッドからは愛しい人物の匂い

「まだかな…」
口元まで毛布を被り、虚しい独り言を閉じ込める。
何度も開く携帯には何も変化なく ただゆっくりと時間が流れていくだけだった。
そんなつまらない時間をもて余した白夜は、二人で選んだ大きなベッドの真ん中で一人寂しく愛しい銀時の帰りを待ち続けている…。
今日はすぐ帰るよ、そう言って今朝銀時は家を出た。しかし、白夜は気付いていた…今週は特に忙しく、休日出勤をしなければいけないくらい仕事があることを。
しかし、銀時は白夜と二人きりで過ごせる休日に仕事をしたくない、といつも言っている。だからこそ、白夜は銀時の早く帰る、という言葉を信じてはいなかった。

案の定、先程から見つめる携帯が表示する時刻が0時と表示してもなんら問題はなかった。
いつも通り一人で夕食を済ませ、テレビを見たり本を読んだりし、時間を潰し、時計が22時を過ぎた頃、諦めたかのように風呂へと向かった。
そして、いつも通り一人寂しくベッドへと潜り込んだ。


「(まだ、かな…)」


重くなり始めた瞼をしぱしぱとさせながら白夜は銀時を思いはじめた。
大学生になりバイトを始めだんだんと銀時と過ごす時間が減ってくる中、互いにゆっくりと過ごせる週末は唯一の癒しであり、恋人として過ごす愛しい時間…。
少しでも隣に居たい。そんな小さな独占欲はいつも心のどこかでモヤモヤと蠢き頭を悩ます。
もっと、ずっと…なんて、女々しい我が儘に白夜はため息を吐いた。
そんな時だった。ガチャガチャ、と部屋の鍵を回す音が聞こえ、白夜は今までさ迷っていた夢現から一気に現実へと戻される。
慌ててベッドから起き上がり部屋から飛び出す。
肌寒い廊下に飛び出せば、廊下の先の玄関に愛しい人物は立っていた。
「銀時、」
「すみません、遅くなりました…」
バタバタ、と幼い子供のように白夜は銀時のもとへと駆け寄る。
そんな白夜の頭を撫でながら銀時は申し訳なさそうに顔を歪めた。
「いいから、敬語やめろ…。」
「あ、あぁ、ごめん。…ただいま、白夜。」
少し拗ねた様な口調でそう言った白夜に銀時は笑いながら謝り、優しく抱き締めた。
「おかえり、」
白夜はそう言って銀時に負けじと強く抱き締め返し、銀時の肩口に顔を埋め銀時の匂いに包まれた。夜風の冷たい匂いと僅かな汗の匂いに、急いで帰ってきてくれたんだ、と白夜は悟る。
しかし敢えてそれを口にせず、白夜は銀時の温もりに身を預けていた。
「…くっそ、また約束やぶってしまった…。」
「別にいい、」
悔しそうに言葉を漏らす銀時。しかし白夜はそんなことは気にしていなかった。この部屋に必ず銀時が帰ってくる…その保証だけで白夜には十分すぎる程の約束だからだ…。
「…眠い、」
そんな当たり前のようで当たり前じゃない幸せに包まれた白夜は先ほどまで感じていた眠気に苛まれる。銀時が帰ってきた事に安心したのか体は段々と重くなりはじめ、意識も段々と薄れだした。
「ほら白夜、寝るならベッドで寝ろ…、」
「ん、銀時も…、いっ、しょ…。」
突然甘えだす白夜に銀時は眉をしかめる。普段は何事にも無関心で滅多に自ら甘える事はない白夜だが、時折こうして甘えだす…。そんな白夜に銀時はいつも理性を乱されてしまう。
「お前って奴は…、」
銀時はそう言って白夜を抱き上げ廊下を歩く。そのまま寝室へと入り白夜ごと銀時はベッドへと沈む。


「明日、何しようか…。」


銀時はそう言ってうとうとし始めた白夜の頭を撫で、優しくキスを落とした。


(今日も、明日も、明後日も、)

ずっと一緒…。


end



坂田弁護士×大学生白夜:こちや様


鏡の向こうの君と僕へ】


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