学校の帰り道を歩いていると、ショーウィンドーにはりついている弥子ちゃんをみつけた。


「弥子ちゃん、」
「名前先輩!」


声を掛けると、弥子ちゃんはショーウィンドーから顔をはなして、こちらに駆けてきた。

ショーウィンドーに張り付いたりして、よっぽどお腹が空いているのかな?と思いどうしたのか問いかけると、弥子ちゃんが話すよりも早く傍にいた青いスーツの長身の男の人が口を開いた。


「今からこちらのお店に入るのですが、よければ貴方もご一緒にどうですか?」


すごく丁寧な話し方をする人だなぁ。
雰囲気も・・・なんだろう、人間離れしているというかなんというか・・・日本人ではないよね。
それにしても日本語が上手だな。
悶々と考えていると弥子ちゃんが噛みつくように私とその人の間に入ってきた。


「ちょっとネウロ!名前先輩を巻き込まないでよ!」
「先生も貴方がご一緒のほうが心強いかと思いまして」


弥子ちゃんの言葉もネウロと呼ばれた人の言葉にも引っかかる単語が入っていたような気がする。
巻き込む?心強い?先生って誰のこと?話についていけない私の頭には次々と疑問符が浮かぶ。
訳が分からないまま突っ立っているとネウロと呼ばれた長身の男の人に背中を押され、店の入り口の前にきた。


「ちょっと!本当に名前先輩まで巻き込む気っ!?」
「この先謎の数が増えるかもしれん」
「勝手なこと言わないで!名前先輩まで危険な目に合わせないでよっ!」


やっぱり気になる。
さっきの言葉が頭の中でリピートされている私の隣で、なにやらこそこそと口論をしてる弥子ちゃんとネウロさん。



しばらくするとげっそりとした顔で弥子ちゃんが話しかけてきた。


「巻き込んでしまってすいません・・・」


なぜ、謝られたのだろうと不思議な顔をしているのが伝わったのか、実は・・・、と苦々しい面持ちで弥子ちゃんは諸々の事情を話してくれた。

私はさっきまでの疑問符が大方消え、モヤモヤしていたものがすっきりした。
そんな私とはうって変わって表情が晴れない弥子ちゃん。
なんだか色々大変なんだな・・・、と同情にも似た感情がわいた。


「そういうことで・・・。巻き込んでしまってすいません・・・」
「謝らないで。私なら大丈夫だから。だから、何かあったら話して?頼りないけど、いつでも聞くからね」


そう伝えると、弥子ちゃんはありがとうございます、と涙を流しながら私の手を握った。本当に大変なんだな・・・、と苦笑いをこぼして私はそのまま、弥子ちゃんに握られるままにその手をあずけた。



( 運命が動き出すまで、あと少し )