会合なんて面倒だ。
それでも参加しているのは、ルッスーリアが力作と豪語していた彼女がいるからといっても過言ではない。
周りに群がる人々を煩わしく感じながら目線は彼女を探す。

やっと見つけた彼女は、グラスを片手にぼんやりと空を見つめていた。
どこか憂いを帯びた様な横顔。
ほんのり色付いた頬。
彼女の全てに、魅了される。

声を掛けると拗ねた様に顔を逸らした。
アルコールが入っているのか、いつもよりどこか幼い様に思う。
じ、と玲音を見つめているとその小さな唇が動く。
しかし、周りの雑音のせいで彼女の声は掻き消えてしまった。
もう一度、と身を屈めようとした瞬間、ネクタイを引かれて体が傾く。
そして次いで訪れる、唇への衝撃。
一瞬の後に離れた唇は血が滲んでいた。
しかし玲音は気にした様子もなく、自分の周りにいた女達に吐き捨てる様に言った。


「XANXUS様に気安く触れるんじゃねーですよ雌猫共」


親指で拭われた唇は、血の赤が色付いていてどこか、艶めかしさを感じた。
そして、彼女の言葉に、自分の中の何かがぷつりと切れた。

「っ!」

ふわりと、けれども噛み付く様に重ねたそれはほんのりと血の味がした。
ぐ、と腰に添えた手に力を入れて自分の方に引き寄せる。
そうしてその小さな体に覆いかぶさる様、口付けを深めていく。
は、と漏れた吐息さえも奪う様な口付けに耐えられなくなったのか、玲音の体から力が抜ける。
くたりと力を失った彼女の体を軽々と抱き上げ、周囲の人々を一睨みしてその場を後にした。

それは、男女共に送る牽制