他ジャンル | ナノ


  煉獄さんの妻の話



うっかり鬼滅を履修したのでつらつらと(いま8巻までいったとこ)

登場から退場までがあまりにもスピーディーでびっくりしちゃったんですけど煉獄さんが好きでした。妻になりたい。そんな話をしましょうか。


たおやかな大輪の華のような人を妻に迎えていてほしいのです。芯の強い美しい人を。
でも周りに流されるように結ばれたお見合い婚なので歩み寄り期間とかあったかもしれない。いまは互いを思い合う良き夫婦になったけど。

三歩下がって影踏まず、の自己主張をしてくれないお嫁さまなので、最初はすれ違ってた。お互いに何を考えているか分からないって思ってる。
いつもたおやかに笑っている彼女が、本当は胸の奥底に不安を抱えていることは分かっていた。けれど、それを聞き出せずにいた煉獄さんとかね

色々と都合が良いから、と結ばれた婚姻なので当人たちの意思は半ば無視されていたし、拒否することもできた己とは違って彼女の心は蔑ろにされてしまったのだろう、と思っている煉獄さんです。きっと、おれのことなど愛してはいないのだろうな、と。もしかしたら、好いた男がいたのだろうか、と。

そう考えるとなんとなくモヤるのが独占欲だってのは分かってない。
彼女の方に視点をうつすと、実はまだ初夜が済んでないことを気にしているんですよ。任務やら何やらで旦那さまが夜いないものだから。結婚初日から床入りのないまま鬼狩りというタイミングの悪さだった。

実は最初を逃したせいでなんとなく手を出せずにいる煉獄さんです。
で、煉獄さんは本当に何を考えているのかわからないので、お嫁さまが出した結論はあの方にとっては義務的な婚姻でしかないのだろう、だった。もし、本気で好いた方がいるのなら私が身を引かなければって

奇しくも考えていることは同じだったりする。いいから早く腹を割って話し合えって感じです。
そんな状況でもよく働いて家を守ってくれる尽くすタイプの良き妻なんです。煉獄さんがただいま、と帰ってみれば、ご無事でなによりです、と少し安心したような彼女に迎えられて、少しづつ愛しさが募っていく

そしてある日それが飽和して、おやすみなさい、と就寝の挨拶をしていつもは隣で眠るだけだった彼女を布団に押し倒してしまったりした。でも「あっ…、おやめください、だめ…」って拒否られた。
「………そうか、すまない!頭を冷やしてくる!!」って外に行っちゃう煉獄さん

微妙にショックだったのか壁に頭打ったりして。でも乱れた寝間着もそのままにお嫁が追いかけてきたよ。「こら、そんな格好で外に出てはいけない。体を冷やす」って精一杯冷静に振る舞う煉獄さん。でも内心はとても大荒れです。壁に頭打ったの見てたから、なんだか動揺しているのだけはわかったお嫁さま

「あの、違うのです。あなたが嫌だったわけではないの…」って、寝間着の胸元を抑えたお嫁さまは恥ずかしそうに小さな小さな声で言うんだ。「その、…、いま、月の障りなものですから…」
だから、あと何日か待ってほしい、とだんだん声が小さくなるのが可愛いし愛おしい。

「なるほど…、これが愛しいというやつか」なんて小さく呟いている煉獄さんに聞こえなかったのかお嫁さまはあの?って首を傾げた。
「どうにも急ぎすぎた。すまない。君の体が落ち着いたら、また仕切り直そう」今日はもう眠ろうか、って戸惑っているお嫁ちゃんを抱き上げて布団まで行く

そうしてはじめて抱き合って寝たんだ。いつもは隣で布団をならべて眠るだけだったのに。
で、仕切り直しを経て、君にとっては望まぬ婚礼だと思っていたんだがなあ、っていう煉獄さんに、あなたの方こそ、ってやっと言えたお嫁ちゃん。どうにもすれ違っていたな、ってようやく気づく。

お見合い婚から本当に大切な人になっていくやつです。

あとは小ネタ
・お見送りをするとき、いつも怪我をしないでとか言いたいことはあるのに飲み込んで「どうかご武運を」って見送ってくれる。姿が見えなくなるまで門の前から動かない彼女のいじらしい姿に早く帰ってやらなければって思う煉獄さん

・煉獄さんの見事な食べっぷりに最初は驚いたけど、今では慣れたもので。お料理のし甲斐があります。なんて言ってくれてる

・彼女へ贈り物をしたいけど女性の好みそうなものが分からなくて「よし!共に出かけようか!!」っていう結論に至るやつ。強引。でも嫁ちゃん的にはそれだけで嬉しい

・他の柱とも交流があるのかは謎。あるのかな。紹介したのかな。でも普段からちょいちょい惚気てそうなんだよな煉獄さん。無意識に。

・夫の仕事には理解がありすぎるほどあるので不満は言わない。ただ待っていていくれる。文句言わないよ。その日が大事な記念日でも。
あの時代に結婚記念日と誕生日の概念があるのかは謎ですがそこはふわっといこうぜ。
結婚記念日に帰れるか微妙な任務でめっちゃ頑張った煉獄さんとか。「妻が!待っているのでな!!」ってスピード解決した
結局、帰れたのは次の日の朝方だったんだけどね。朝餉の支度をしている妻のところにただいま!って飛び込んできた。わりとあちこちドロドロ。怪我は少ないけど汚れてる。
「すまない! 結婚記念日だというの帰ってこれなかった!!」「いいんですよ、こうして無事にお戻りいただけたなら」
さ、お風呂に入って着替えてください。って、顔についた泥汚れを手拭いで拭ってくれるお嫁ちゃんでした。愛しい。
で、ゆっくり朝ご飯を食べて、1日遅れのお祝いをしたりするんだ。






いつか来ると覚悟していたはずの訃報に泣き崩れてしまったお嫁さまです。けれど、その後、人前では気丈に振る舞っていた、けど葬儀が終わったあたりで限界が来てぶっ倒れてしまったんだね。心労から来るタイプの体調不良。というわけでご実家で療養中かもしれない。

そこに千寿郎くんに言われて炭治郎くんが来るんだ。「無理を承知でお願いします。義姉上にも会いに行ってはいただけませんか」って。少しでもあの人の心労が和らげば、ていう気遣い。あとを追ってしまいそうで心配してるんだよ千寿郎くん。

あー、煉獄さん、たぶん妻宛に遺書残してる。言いたいことが多すぎるから。その在りかを炭治郎くんに伝えてた。でも「手紙の三枚目を燃やしてしまってくれ。あれは彼女に渡したくなくなった」って言うんだ。で、千寿郎くんとお手紙探しして2人で「三枚目」を確認した。
「…兄には怒られるかもしれませんが、これは義姉上にも見せるべきです」「そう…、ですね。その上で渡したくなくなった、とそう言っていたことを伝える方がいい」ということで、炭治郎くんが遺書をお届けすることになったよ。

「杏寿郎さんから奥様への言葉をお伝えに伺いました…」っていう炭治郎くんを迎えてくれたのは、いまにも消えてしまいそうな美しい人でした。「…お見苦しい姿で申し訳ありません」って布団の上で上半身だけ起こした彼女がいうから、いいえ、って首を横に振る。お辛いでしょうに会ってくれてありがとうございますって。炭治郎くんいい子。
「……これを、あなたに渡してくれ、と頼まれました。それから、三枚目は渡したくなくなったから燃やしてくれ、と」失礼ながら千寿郎さんと中を確認させてもらいました、その上で、お渡しすべきだろうと、って事情を説明してくれた炭治郎くんから、遺書を受け取って、彼女はゆっくりとそれを開くんだ。

『君に伝えたいことが多すぎてきっと心残りになってしまうだろうから、こうして手紙に残すことにした』からはじまる遺書でした。1枚目と2枚目は先にいなくなってしまうことに対する謝罪と、いままでの感謝と、これからもどうか長く生きてくれ、というそんな内容だった。君を愛しているよって。
もうその2枚だけで泣いてしまうんだけれど、問題の3枚目。『君のこれからのことが心配でならない。おれに縛られることはない』『落ち着いたなら、実家に戻りなさい』『君の人生はまだ長い。誰か別の人と幸せになってくれ』っていう内容
彼女の今後を思うなら、己の死が足枷にならないように、自由にしていい、と伝えるべきなのは分かってたんだ。だから、遺書に残した。でも、死に際にやっぱり嫌だなぁって思ってしまったんだよ煉獄さん。だから、炭治郎くんに燃やしてくれって頼んだんだ。

「……ありがとう、炭治郎さん。これを、わたしのところまで届けてくれて」おかげで、あの人の想いの全てを知ることができました、って泣きながら笑っていうんだ。きっと、もう大丈夫、って。


だから、彼女はこの先も煉獄の姓を名乗って生きていくよ。煉獄杏寿郎の妻として。最後までね。



煉獄さんが望んだ通りに平穏に長く長く生きておばあちゃんになって大往生するのも良いのですけど、どこかで子供守ったりして死にそうだなとは思う。

長く生きて欲しい、と願われたのに、ごめんなさい。けれど、あなたの妻として恥じない振る舞いができたでしょうか。ねぇ、杏寿郎さま、って。


君を誇りに思う、って抱きしめてくれたんだ。

prev / next

[ back to top ]