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[帰省/倉持洋一]

洋ちゃんが実家に帰省しているらしい。が、帰省したと聞いてから三日経ってもまだ会えないというのは私の間が悪いだけなのだろうか。同じ団地だというのに。

以前洋ちゃんが帰省した時は土日を利用して帰ってきていただけだからなのか、その二日の間に洋ちゃんに会うことはなかった。だから今回は会いたいと思っているのだけれども自分から会いに行ったり、洋ちゃんがいそうな場所に行ったりするのはなんか違う気がする。

でもそんな時に限って会うのが、大袈裟に言えば人生というやつで。ゴミ捨て場にゴミを捨ててきた帰り道に、バットを肩に乗せている洋ちゃんとばったり会った。

「おー、なんか久々だな」
「久しぶり。というか洋ちゃん、そんな所で一人でバット持って突っ立ってて不良怖いって怖がられない?」
「はぁ?んだよ、それ」

眉間に皺を寄せた洋ちゃんは溜息をつくと吹き出すようにして笑った。私もそれにつられて笑う。

「どこ行ってたんだよ?」
「ゴミ捨て行ってた」
「あー、今日ってお前の当番なのか」

そんな会話をしている間に、洋ちゃんは肩からバットを下ろして素振りを始めた。この洋ちゃんの素振りが上手だとか下手だとかは全く分からないけれど、振る度にブンッという効果音がついていそうで迫力がすごい。本当にすごいなと野球にまっすぐな幼馴染の姿に改めて感心する。

「……なんだよ」

顔をしかめた洋ちゃんにそう呟かれて、ようやくずっと見てしまっていたことに気がついた私は「な、なんでもない!」と慌てて首を振る。すると「……そうか」とまた呟いた洋ちゃんが素振りを再開した。
だから私も家に戻ろうと踵を返して「じゃあ、」と口を開いたその時だった。私の声に洋ちゃんの声が重なった。「俺が怖がられてるんだと思うなら付き合え」って。

自覚があるのかどうなのか自分で言うのはどうかと思うけれど、私自身もっと洋ちゃんの近くにいたかったのも本心で。

「それ自分で言う?」
「ヒャハハ。お前が先に言ってきたからだろ」

久々に聞いた洋ちゃんの甲高い笑い声に何故だか胸がいっぱいになった。







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