少しずつ変わる者の証言 「昔の建造物とか残すじゃん。あれ、よくわかんないんだよね。あ、よくわかんないのは残したい奴の心理的なあれで、俺個人としては嫌なんだけど」 ベルフェゴールはバスケットに入ったクッキーをぼりぼりと 「あら、いいじゃない。歴史を感じて」 「だって歴史とか勝手に変えていく癖に昔にすがってやがんの。意味わかんなくね?教訓だとか芸術だとか言うけどさ、その時の ごくごくとベルフェゴールは紅茶を飲み干す。ルッスーリアは、熱くはないか、と一瞬心配をしたが、当の本人がなんでもなさそうだったので、とりあえず空のカップを受け取って新しく注いだ。ベルフェゴールはバスケットのなかのクッキーを食べるでもなく見つめている。 「そうねぇ。私もそこまでなんでもかんでも残すのがいいとは思わないけど、綺麗ならいいんじゃないかしら。ほら、 「だからダメなんだって」 「なぜ?」 ぐさり、というような見た目だが、聞こえた音はさくりだった。ベルフェゴールは自前のオリジナルナイフをバスケットのなかのクッキーの一つに刺して、そのまま何をするでもなくナイフから手を放し、放置する。クッキーはぱっくりと割れていたが、辛うじてナイフが立つくらいには形を留めていた。 「修復しちゃったら結局『その時』じゃないし、結果を知ってる安全な ルッスーリアはそういうものかしら、と首を 「明日が来るなんて保証はないからさ、昨日はあったのに、なんて思わせないでほしいんだよね」 そう言って扉の奥へ消えていく背中は、ただの少年に見えた。 → 3/3ページ 目次 / TopPage |