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高層ビルばかりの風景。道路も多々あり自分たちの世界では考えられなかった光景がそこにあった。遊星がホッと安堵の息を吐いて見慣れたはずの風景を目に焼き付けるように眺めている。彼はこの未来の世界を救うために来たと言っていたから、無事なことに安心しているのだろう。
三人はそれぞれはしゃぎながら周りを眺めていると、遠くから走ってくる集団がある。遊星の仲間だろうか、と思った瞬間ぎょっとした。遊星が、エンジンを、蒸かしている。


「遊星君、ちょっ」

止めるのが遅かった。勢いよく走り出したDホイールは集団の中の一人に直撃した。いや間一髪よけた。


「遊星!いきなりご挨拶だな!」

「すまない手が滑った次はもっとうまく殺るように気をつける」

「棒読みが怖いわぁ!!」


尻餅をついた金髪に一瞥をくれてやり、やっと愛車から降りたのにほっとした。まぁ喧嘩するほど仲がいいとも言うし、と微笑んでいると隣から「海馬君の子孫?」と聞こえた。あ、それより二人の子供がこっちを見ている。一人が嬉しそうに一層瞳を輝かせると一直線にこっちへと走ってきた。


「初代デュエルキングの武藤遊戯だぁ!!」

「龍亞、やめなよ!」

元気な男の子に抱きつかれて困惑する。横に助けを求めると、遊戯が笑顔で少年を引き剥がした。しかしこれですまなかった。
先程遊星にひき殺されかけた金髪が目を剥いて迫ってくる。あまりの形相にユウギは思わず後ずさる。だが負けてなるものかと睨み返すのはいいが、身長差が海馬ほどであり、なおかつ相手は初対面。海馬に似ているがどう扱っていいのかわからず動けない。と、仕掛けてきたのは、まさかの遊星だった。


「おいジャック。迷惑だ。ハウス。」

「遊星。痛いからブレーキ踏んでくれないか。」

アクセルは踏んでいないものの、ドライブにギアを合わせているから勝手に前進し、ジャックを地味に攻撃する。注意にも聞く耳持たず睨みつけてる姿を見て、俺もあういうふうにすればいいのか、と迷惑な方向で納得したユウギ。子ども達は次のターゲットを遊戯に絞りデュエルを申し込んでいる。十代はユベルを見て驚く(どうやら精霊の姿で見えてるらしい)多勢に対する事情説明で忙しいようだ。まぁ平和そうで何よりだ。


「遊星!!貴様こんなチビに負けたのか!?」

「ユウギさんたちにはやる前から勝てるとは思わない。なんたってかの有名なデュエリストだからな。」

「遊戯…。そうか、聞いた名だと思えば過去からさらってきたのか!?一歳しか年は変わらんぞ!?」

「俺を勝手にロリコンだと判断するのはやめて貰おうか。」


一気にアクセルを踏めばコートが巻き取られてジャックが派手に転けた。一応仲間だよ、な?と冷や汗を流すユウギを知らない遊星は自重を知らずに謎のSMプレイを続ける。龍亞、龍可の双子に聞けばいつも通りの光景らしい。
こんな日常は嫌だ。


「遊戯さんたちはさておき、遊星お疲れ様!!」

「あ、ボクら置いておかれるんだ。」


遊星に抱きつく龍可に、ずるいと張り合う龍亞。抱き止め頭を撫でるロリコ、いや遊星は幸せそうだ。


「それより遊星、問題か起きたの。」

龍可のあまり重大そうではない言い方に目をむいたのはその遊星であり。無言でノートパソコン(遊星愛用)を突きつけたのはオレンジ頭の顔中黄色いものがついた男で。覗き込んだ場には巨大な文字が一つ。


『デュエルキング、武藤遊戯行方不明』

『遊城十代、行方不明』


「あぁやっちゃったかぁ…」


遊戯が冗談交じりに頭を抱えてみせるが、顔が明らかに笑っている。これはこの状況を楽しんでいるときの表情だ、長い間一緒だからわかる。十代も「あぁ誰が探したんだろうなぁ?」とのほほんとユベルと猫に話かけている。「誰でもいいんじゃない?ボクは今ここに十代がいるから満足さ!」とさりげなくアピールをするユベルだが十代は遊星に負けないスルースキルを見せる。


「本人たちもこう言ってるし、問題ないだろ。」

「大ありだから言ってるの!」

「元の場所に返してこい!」


遊星の両親宜しく、クロウとアキが噛みつくように言う。「ペットみたいな言い方やめてよ」という遊戯と十代の非難などは請け合ってもらえない。ややこしい話は相棒に任せるぜ、と自分はまとわりつく子供たちのデッキを拝見している。平和が一番だ。


「でも赤き竜の力はもう働かないようだが。」

「大丈夫。しばらく充電してれば動くわ。」

「赤き竜って携帯か何かなのか?」


アキが珍しくボケるのにクロウが静かにつっこむ。放っておけばこの空間、ボケ倒しになってしまう。


「じゃあ仕方ねえな。…しばらくの間だからな。」

お父さ、ではなくクロウの許可がおりると双子、十代、(遊星は無表情で)喜ぶ仕草を見せた。地味にジャックから殺意、いや敵意を向けられているのは何故だろうか。とりあえず「未来も面白いね」と微笑んでいる遊戯に相槌をうっておくことにした。

後日過去の先輩を元の時代に送り届けて、ニュースの記事が正常に戻ったことでこの事件の幕は閉じられたという。



+END



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宙様から相互(再)記念に頂きましたv
頂いた際に修正して頂いちゃって……す、すみませんでした…!;

それにしても三代主人公でygo!三時代を旅行なんて、なんて贅沢なお話…!
三代主人公たちのじゃれ合いや各時代のキャラ達との絡みが可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くてもうっ!!!!!
ライバル組の扱いも相変わらずで安心しましたw
宙様の不動のギャグセンスには毎回腹筋が崩壊しますww


宙様!素敵な小説をありがとうございましたv






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