▼13/05/03 03:48...小話


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■診断:零遊で「ひ」から始まり「ん」で終わる文章



 疲弊しきった顔を学習机に押し付けてのびる姿はさながら潰れた蛙だ。と正直な感想を述べれば、きっと雨蛙も真っ青な俊敏さで飛び上がり不満を垂れるのだろう。
 大丈夫ですかと被った皮の上辺だけで気遣ってやると、飴玉の瞳はじっとりと湿気を含んだ視線を寄越してきた。
 口ほどに物云う器官が目であるならば、彼の場合、頭の天辺からつま先まで細胞という細胞が目玉でできているのだろう。平たく言うと、彼は思考感情が非常に分かりやすい。今も唇を尖らせ脚を伸ばし全身で不服さを訴える彼に、しかし敢えて小首など傾げてすっとぼけてみせる。何故なら真月零とはそういう「人間」だからだ。
 人が疎らな時間とはいえ身分を隠している以上、それを破り安に期待に応えてやるわけにはいかない。その辺りは彼にも十分理解を得ているはずだが、どうにも人間というものは理性と本能のどちらも捨てられず板挟みの苦しみとお付き合いしたがる種族らしい。なんとも難儀な一族だ。しかし。

(―そんなに可愛らしく拗ねられては。)

 これが巷で聞く惚れた弱みというやつなのか。理解しがたい人間の生態であれど、それが彼であるだけで酷く感情を沸きたてられるのだ。
 ああ遊馬くんゴミがついてますよ、などと腰を屈め、目にも鮮やかな前髪に引っかる落ち葉を摘まみあげる。乾いた土の匂い。内心で苦笑しながらすっかり不貞腐れてしまった顔を覗き込む、ふりをした。
 瞼にリップ音。
 驚いて飛び起きた君の目の前で、今しがた取り除いた落ち葉を息を吹きかけて飛ばしてやる。
 今回だけは特別だと心中で前置きして吐息に微かばかりの声を乗せた。

「それでも、君への思いは変わらない」


 信じてくれ。


意図せず笑んでしまうのは、なんでもない。
不変に君を愛しく思う幸福感。


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本性=警部。
自分を思って探していたと思っていたよかれルートがわざと無茶苦茶な道を選んで引っ張り込まれていたと知って拗ねる遊馬くん。





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