「アゲハ、シャワー浴びてきなよ」
「んー…」
「元気ないのね、大丈夫?」
「んー…」
「何かあったの?」

いつもなら一緒に行こうとはしゃぐのに、今日は元気がない返事しか返ってこない事を友達の1人は不思議に思った

「んー……あったっていうかー…まぁ…ねぇ、アンジーは誰か好きになったことある?」
「え?何よ急に。…loveというよりlikeの意味ならいるわよ、いっぱい」
「ちっちっち、違うんですよー」
「あ、そ。やっぱ告られたんだ」
「うん」
「マジで!?名前は?呼び出しされたっていうスリザリン生なんでしょ?」

興奮した友達、アンジェラに肩を揺さぶられ、あまりの迫力に目を伏せる
そして申しわけなさそうに答えた

「…そうだけど、ごめん、言えないの」
「口止め?まぁスリザリンがハッフルパフの人間を見初めるなんて、スリザリンからしてみればあまり知られたくないのかもねぇ」
「なにそれ…意味わかんない」
「アイツらは私たちを見下してるから」
「…変なの」

友達の言葉を聞き、切なそうに顔を歪めると、レグルスのはにかんだ顔が頭に浮かんだ
自分に素直に笑ってくれたレグルスが、自分を見下していると思うと、少し悲しかった

「シャワーは明日の朝浴びる。私もう寝るね」
「…わかった、ちゃんとあったかくして寝なさい」
「ん…」

おぼつかない足取りで寝室へと戻り、着ていた服をベッド下に脱ぎ捨て下着姿でベッドに潜り込んだ

普段考える事のない難しい事を考えたせいか、意識がいつもよりすぅーっと遠のいていくのを最後に、アゲハは眠りについた



「…い、早く……なさい」

友達が呼んでる
でもまぶたが重たくて開かない
無理に開けようとすると、まぶたの裏がくすぐったくてムズムズする

「(ごめん、あと1時間寝かせて…)」
「レグルス・ブラックが呼んでるから早く起きなさい!馬鹿アゲハ!!」
「痛っ…!!んー!!!」
「さっさと起きないのが悪いんだからね!」

友達に顔面を平手打ちされ飛び起きた
赤くなった鼻を押さえ、起き上がるといきなり下着を剥がされる

「さっさとシャワー浴びて着替えて外に行くの!もう5分は経ってるのよ」
「…え?はい(ブラックが私を呼んでる…?きっと、昨日の事でだ)」

寝過ぎたせいか、ふらつく頭を一気に冷やし、体の隅々まで洗い流して急いでシャワー室を出た

「私の制服は?」
「こっちよ」
「ありがとーじゃあ言ってくるね」

急いで制服に身を包み、髪を乾かして部屋を出た
パタパタとクマの顔付きルームシューズが可愛らしい音を立てて寮の階段を下りる

「ブラック…さん、お、おはようございます」
「……おはようございます。朝は苦手みたいですね」
「スミマセン…」
「いえ、いいんですよ。アゲハ…タイが曲がってる、それに靴がルームシューズですよ」
「ええっ!!あ、すぐ履き替えてくる」
「ちょっと待って」

スッ、とレグルスの手がアゲハの鎖骨を掠め、思わず体が跳ねる
女の子に負けないくらいの細い指がネクタイを直してくれた

「あ、ありがとう…(びっくりした…)」
「いえ、じゃあここで待ってますから」
「はい…」

“スリザリンがハッフルパフの人間を見初めるなんて、あまり知られたくないのかもね”

「(言動がそうだとは思えないよ…むしろ知ってほしいみたいな態度じゃない)」

レグルスの接し方があまりにも普通で、と言うより昨日に比べて凄く優しくて、昨日友達が言っていた言葉が変に思えてしまう

「(まさか裏があるなんて事はないよね…いや、でも相手スリザリンだし、狡猾だし、信用しがたいところがあるんだよね…)」

ローファーを履き慣らし、今日ある授業の荷物が入った鞄を持ってレグルスの元へと急いで戻った

「何度もごめんなさい」
「大丈夫、気の長さは人一倍だから」
「ブラックさんは紳士なのね」
「そうですよ。ではお嬢さん、鞄持ちましょうか?」
「大丈夫です、今日は軽いの」

パタパタと鞄を振って見せると、レグルスは眉をしかめて首を振る

「遠慮しないで」
「ほんとにいいの、だって、そんな重そうな荷物を持って、私の荷物も持つなんて言われても私が困るわ」
「……ごめん」
「分かればいいのよ」

得意気に口元を緩めて笑うアゲハをよそに、レグルスは突然立ち止まった

「…アゲハ、食事の前に昨日の話しようか」
「あ…うん(忘れてた…)」





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