「ど、どうしよう…胃が痛くて立ち上がれない…」
「あんたが緊張してどうすんのよ」
「だって…レグルスの初めての大舞台だもん」
「じゃあ尚更いい場所取らなきゃ。さっさと立ってさっさと行くわよ」
「あい…」

レグルスの怪我が治って一週間が経った今日、スリザリンとレイブンクローのクディッチの試合
この試合はレグルスにとって初の公式戦となる
アゲハはレグルス本人よりも緊張していて、膝はガクガクし、胃はキリキリと痛んで顔面蒼白の状態だった

「ほら、彼女なんだから試合前の彼氏に激励してきなさいよ」
「ま、待って…緊張し過ぎて、喉が詰ま…る…」
「…馬鹿じゃないの?」

友人のアンジェリーナに引っ張られながら、スリザリンが控えるテントの前に無理やり立たされる
行け。と首を振ってジェスチャーするアンジェリーナに無理だと首をガクガクと振った

「……はぁ…」

痺れを切らしたアンジェリーナは、震えて動けなくなったアゲハをテント前から回収する

「本当に馬鹿な子ね」
「返す言葉もありません…」
「頑張って。の一言がなんで言えないのよ」
「…言えるよ…でも緊張して頭が真っ白になっちゃう……情けない」
「情けないわね」

アゲハに説教をするアンジェリーナがため息を付く
ちょうどその時、テントから箒を手にしたスリザリンのメンバーがゾロゾロと出てきた
列の最後に真剣な表情のレグルスを見つけると、今しか無いわ。とアゲハの背中を押す
アゲハは目をきゅっと強く瞑り、震える体を必死にこらえて口を開けた

「レグルスさん!」
「……え…」

彼の名前を呼ぶ自分以外の女の子の声に、思わず間の抜けた声が出る
強く瞑っていた目を開くと、一瞬にして体から血の気が引く光景がアゲハの目に飛び込んできた

「……」

「私、レグルスさんの為に最上階で応援します。ですから頑張ってください」
「あ…ありがとう…」

レグルスの首に腕を回して甘えた声を出す可愛い栗色の髪をした女の子
レグルスはびっくりしながらも抱きついてきたであろう女の子の背中に手を回して支えている

「それでは失礼します」

抱きついてきた割には礼儀正しくお辞儀をして小走りで去る女の子に、あ然として言葉も出ない
固まっていたレグルスがピクリと動いた事でハッとし、急いで隠れようとしたが、腰まである髪でよく目立つアゲハにレグルスが気づかないはずはなく、すぐ見つかってしまった

「…あ…アゲハ…」

ちょっと顔が引きつっているレグルスを見れば、胸がツンとなって苦しくなる

「(今の意識してるのモロバレだよ…)が、頑張ってね」

レグルスから何か言われてしまう前に、それだけ言うとアゲハは逃げ出すようにアンジェリーナの元へ走り去った


「残念なのはその酷い顔だけにしてよね。オツムまで残念なんて話になんないわ」
「……返す言葉もありまセン…」

一番隅の目立たない薄暗い席
せっかくのレグルスの晴れ舞台なのに、ここからでは全くと言っていいほど見えない場所にアゲハとアンジェリーナは座っている
アゲハは今ショックな事が重なり、顔は血の気が失せていつもより青白くなっている

昨日のレグルスの言葉と先ほどの光景が脳裏に焼き付いていてそれが脳内で何度もリピートされているのだ
ゲームの内容なんて全く入ってこない

「(…ホント、最悪…)」


全てにおいて、情けない自分に吐き気がする





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