「アゲハ?」
「リーマスさん!」

保健室から寮に戻る途中、中庭から歩いてくるリーマスと目が合う
アゲハはこんな明け方に親しい知人に出会った事が嬉しくて思わずリーマスの所まで駆け寄った

「リーマスさん、こんな時間にどうしたの?」
「アゲハこそ…まだ明け方だよ?どこかに行ってたの?」

早く起きる事が苦手なアゲハがまだ日も登りきっていない時間帯に起きていることをリーマスは不思議に思った

「ちょ、ちょっとね…それよりリーマスさん、頬に傷が…」

アゲハは薄笑いでなんとかごまかし、リーマスの右頬の真新しい傷にそっと触れる
リーマスはそんなアゲハの手を掴んで困ったように微笑み、ごまかさないでと言った
すると先ほどレグルスにキスされた事を思い出して真っ赤に顔が染まった

「僕は大丈夫、木の枝で傷ついただけだから…アゲハは今までレグルスくんといたんでしょう?」
「え、えっ?何で分かったの?」
「ローブの色だよ。アゲハのローブカラーはイエローでしょ」
「あ、そっか…ジェームズさん達にはナイショだよ」
「分かってるよ。じゃあねアゲハ、僕は保健室に行ってくるから」
「うん、またね…」

どこか疲れているように見えるリーマスの後ろ姿に、アゲハはバレちゃったな、というちょっぴり複雑な思いと、頬の傷が気になる思いで少し苦しかった


「……あ、寮に戻らなきゃ!」

朝日が昇りだし、今まで少し薄暗かった景色が明るくなる
少し考えていたアゲハは、はっと気が付き慌てて寮に向かう階段を降りたこっそりと自室のベッドに潜り込み、眠りにつく
だけどその20分後、友達に頭を軽く叩かれ無理やり起こされ、無断外泊と朝帰りの事でたっぷりとお説教を食らった

「心配したのよ!ベッドは空っぽだし誰に聞いても知らないって言うし!あんた馬鹿で方向音痴だから迷って戻れなくなってお腹空かせてたらどうしようかと思ったんだから!」
「アンジー…」
「でもその様子じゃ大丈夫のようね、ブラックと一緒にいたからかしら?たかが12で朝帰りなんていいご身分じゃない。さっさとそのローブをスリザリンに返してきなさい」

杖片手に仁王立ちする姿が迫力ある
鬼の様な形相のアンジーにアゲハはびくびくしながら答えた

「で…でも、今レグルス入院してるから…後でいい?」
「……はぁ…じゃあもう二度と連絡入れずに外泊なんてしないと誓って」
「はい…ママ」
「次ママなんて呼んだら殴るわよ」
「もう殴ったじゃん…」

額に食らった軽い張り手
少し痛むそこを自分で優しく撫でて痛みを和らげる

「口答えするなら反省文羊皮紙2m分書かせるわよ」
「ごめんなさい…」
「…まったく、しょうがないからもう寝なさい。今日が休みで良かったわね」
「うん!」

聞き飽きたお説教の終了を告げられ、先ほどまでだるそうだったのに
素直すぎる。と言うよりは子供っぽすぎるアゲハに、仕方ないとため息を付いた

「…ほら、ちゃんと掛けなさい」
「ん…」

レグルスのローブを抱きしめて瞬殺で眠り込むアゲハ
アンジーは額に掛かった前髪を横に流して静かに部屋を出た

「アゲハ、おやすみ」







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