「(…柔らかくて温かい…なんだろう…これは人肌…?)」

まだまぶたが思うように開かない
目に力を入れて無理やりまぶたを開かせると、言葉が出ないくらいびっくりし、一瞬で眠気が消え去った

「っ…!!アゲハっ…!?」

声が裏返り、喉がひくっと震える

レグルスに抱き付いたままの力ないアゲハの腕を振り切り飛び起きると、起きなきゃ良かったと心底思う光景が視界に入った

「(…なんでこんな事になってるんだ…?夕食食べた後に帰ったんじゃなかったの?それより、これなんとかしなくちゃ…)」

ワンピース型のネグリジェは、青白いふとももまで捲り上がり、左足と右足の間に影が出来ていて、女性が普段露出しない部分だけあってひどく官能的に見えた

とりあえず捲り上がった裾を下げようと恐る恐る触れれば、ぴくんっ、と体が動く

「っ…!!」
「んぅー…」

眠ったまま足をもじもじと捩らせ、寝ていた向きを反転させる

「(…どうしようも、こんな所兄さんとかに見つかったら…)」

レグルスの心臓は、これまで味わった事のない緊張感とスリル感で、バクバクと通常の倍早く動いていた

そんなドキドキがピークに達した時、寝ていたアゲハが突然むくりと起きる

「…レグルス…?」
「わぁっ!!…っアゲハ、おはよう…」
「……ん」

まだ寝ぼけているアゲハは、まだ眠たそうに頷く

「(……寝ぼけてる…?)」

今まで寝ていたからまだ体が火照っていて、ほのかに色付いた頬や、いつもより血色がいい赤い唇に、きゅん、と胸が締め付けられた

「レグルス…もー朝?」
「うん」
「…おはようございます」
「おはようございます」

ぽすっ、とアゲハはベッドに付くまで頭を下げ二度目の朝の挨拶を交わす
レグルスも釣られて挨拶を返すと、アゲハは顔を上げ、だだっ子のように唇をすぼめる

「でもまだ眠いの…」
「もう寝ちゃ駄目だよ」
「んー…分かってる…レグルス、腕治った?」
「うん、もう痛くないよ」
「良かった……んーっ!!」

両腕を上に伸ばして大きく伸びをしたアゲハはスッキリした顔で笑ってみせた

「へへっ、なんか変な感じ…新婚さんみたいね」
「そうかな…」
「うん、私顔洗って着替えてくるね」
「行ってらっしゃい」

ゆっくりベッドから降りて、バスルームに向かう



「…はぁ……」

いつもと変わらないアゲハの態度
レグルスは、照れて恥ずかしい思いをしているのは自分だけなのかと思い、心が切なくなった


******


バシャバシャ、と蛇口から出た水が水洗面台に当たり排水口へと流れていく

流れる前に水を手のひらですくい上げ、顔に冷たい水を押し当てた

「(どうしようも…レグルスとお泊まりしたんだ…出会ってまだ半年にも満たない男性と…)」

心臓がバクバク鳴り、空気が上手く体に回らなくなる
そして、タイミングがいい事に、昨夜レグルスに抱き締められ、額にキスされた事を思い出してしまった

「(レグルスと…泊まって…泊まっ…)」

顔は熱くなるのに冷や汗が背中を伝う

「ママ、パパ、ごめんなさいぃぃっ…」

嘆くように洗面台にうなだれる
そして、両親にはしたない事をしたと深く反省した

そして数分後、深く深呼吸し、バクバクする心臓を落ち着かせてなんとか気を持ち直した
バスルームから出て重い足取りでゆっくりと保健室に戻る

「レグルス、私一度寮に戻るね、一緒にいるところ見られたらマズい事になるし、着替えたらまたすぐ来るね」
「うん、でもそのままの格好じゃ見られたら不振に思われるから、これ着てって」
「ありがとう」

レグルスが貸してくれたのは、スリザリンの校章が入ったローブ
目立つパジャマの上から羽織ると、風がローブを抜け、レグルスの匂いが香る

「…レグの匂い…」
「…嗅がないでよ」

ふんふん、と犬のようにローブの匂いを嗅いで笑うと、レグルスに頬を摘まれた

「いひゃい…でも、シトラスのいい匂いだよ?」
「汗臭いよ」
「そう?お洗濯頼んでおこうか?」
「いいよ、それくらい自分でできる」
「わかった。じゃあまたね」
「うん、また…」

アゲハの腕を引っ張り、唇の真横にキスをする

「っ…レグ、今誰もいないよ…いちゃつかなくても…」
「僕がしたかったからしたんだ。人目なんてもう気にしてないよ」
「(…天然わがまま王子)」

人目が届かないところでもいちゃいちゃするなんて、まるで本物の恋人みたいだと、アゲハは落ち着かせたはずの心臓が、またバクバク鳴り響くのを全身で感じながら思った







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