「レグルス!!」
「…アゲハ、どうしたの?」

1日の授業が全て終了した放課後、アゲハは半泣きで息を切らしながら保健室に飛び込んできた

目を丸くし、びっくりするレグルスの姿を涙ぐむ両目で捉え、安堵のため息が体の奥底から出る

「シリウスさんが…レグルス、クディッチの練習中に数十メートルの高さから落ちたって、全身打撲して、瀕死だって聞いたのっ…」
「全身打撲って…ただの骨折だよ(全く、兄さんはロクな事しないな…)」
「全身骨折ー!!?」

ショックで心配な感情を露わにした真っ青な顔で、ヨタヨタと覚束無い歩きでレグルスに近寄り、ひっくひっくと泣き出した

「レグ、死んじゃうの…?」
「…死なないよ、骨折したの右手だけ。ブラッジャーが当たっただけだよ、ほら涙拭いて」
「ん゙ぅっ…でも、痛いよね?」

レグルスは何ともない片手でサイドテーブルに置いてあるハンドタオルを取り、丁寧に涙を拭ってあげた

「ちょっとね、でも大丈夫。マダムポンフリーに治してもらったから、骨が完全にくっ付くのに1日掛かるから今日はここに泊まるんだ」
「そっか、ちゃんと治るのね、良かった…」

怪我自体、シリウスから聞かされた内容よりも軽く直ぐに治ると聞き、やっと気持ちが落ち着く

「ここ座っていい?」
「うん」

ベッドサイドにある椅子を枕元に引き寄せて座ると、レグルスに頭を撫でられ、アゲハは猫のように気持ち良さそうに目を細める



そんな無邪気で可愛い顔をされると、本当に自分を好いてくれているんじゃないかと、レグルスは思った
仮の恋人だけど、本物の恋人らしいことは一通りしたし、キスだって、まだ1回しかしてないけど一応した

その時、嫌がる素振りさえされなかった

ただそれだけの事を思い返すだけで、それが嬉しいと感じる自分がいる

「(まるで僕の方がアゲハを好きみたいだな…いや、まさかね…)」

気持ちではそう思っているけど、無意識の内に優しく穏やかな目でアゲハを見つめているらしく、アゲハはいつもその視線に気づいては顔を赤らめるのだった

今回もその視線に気付き、照れて顔を赤らめる
そして言葉をゆっくりと紡いだ

「あの…レグ、今日消灯時間までここにいていい?」
「いいよ、ご飯もここで食べる?」
「うん、1人じゃ寂しいでしょ?それに、レグが傍にいないと私が、寂しい…」

一瞬時間が止まったように呆けてしまう
レグルスは赤くなった顔を見られないようにアゲハから顔を背けた

「……それ言って恥ずかしくない?」
「恥ずかしいよ!けど、寂しい思いするよりマシだから!」
「……ありがと」
「…うふふっ」
「なんですか、その気持ち悪い笑い方」
「つい出ちゃったの!引かないでよ」


会話までは聞き取れないものの、誰も近寄れない空気の保健室に、こっそりと入口で中を覗くシリウス達は入るに入れなくて困っていた

「ここまで仲良しだなんて思わなかったね」
「見てるこっちが恥ずかしくて死にそうだよ」

そんな事を言いながらも、ピーターとジェームズは仲睦まじく話す2人を意外にも温かい眼差しで見守る

「アゲハはのんびりした子だし、レグルスくんは生真面目だから、お互い自分に無い物を相手が持っているから、案外いい相性何じゃないかな?」
「……」

リーマスが冷静に観察し、シリウスは眉間にシワを寄せながら黙って聞く


「今日は、2人だけにさせてあげといた方がいいんじゃないかな…?」

言っていいのか悪いのか分からない意見を、珍しくピーターが言い出した
3人はピーターの意見に賛同し、出直すか、と結局保健室の前から立ち去った




その頃、保健室の中では…


「ねぇレグルス、クディッチ楽しい?」
「凄く楽しいよ」
「そっか、良かった。でもこれからは怪我しないように気をつけてね」
「うん、心配してくれてありがとうアゲハ」


やっぱり甘い空気に包まれていた






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