「アゲハー!お兄たまだよー!」
「ジェームズさん!」

おいで、と腕を広げられれば、その腕の中に飛び込む
ジェームズはアゲハの体を軽々と持ち上げ、頬に挨拶のキスをした

「んー、アゲハのこめかみは赤ちゃんの匂いがする…」
「えーそれ嬉しくない…」
「ごめん、ごめん、でもいい匂いだよ。…あれ?アゲハ口元傷ついてる」
「傷…あ、えっと、自分で噛んじゃったの」
「……ここだよ?」

ぷにっ、と唇のちょっと上を指して首を傾げられた
こんな所どうやったら自分で噛むんだ、と言うような視線を向けられ、言葉に詰まると、シリウスがニタニタしながらやってきた

この人がニタニタ笑いながら来るのは、必ず悪い事を考えてる時だ
アゲハはジェームズの腕から逃れようともがくが、やってきたシリウスにすぐ捕まった

「チビ子、久しぶりだな。やっぱお前もその傷ついてるのか」
「シリウス……もしかして、もしかしなくても、そういうこと?」
「そうだ。さっき会ったレグルスにも付いてたぜ?キス下手なんだな」
「ち、違うよ!下手なわけじゃないよ!シてる時に喋っちゃっただけだよ」
「それを下手っつうーんだよ」

ぐにぐにと頬を摘んで左右に引っ張り、アゲハをいじり倒すシリウスに、ジェームズはアゲハの純潔が奪われたと軽いショックを受けていた

「だ…だって、急でびっくりしたの。だから、ちょっとぐらい唇切れちゃってもいいじゃない」
「「……(ピュアすぎて自分が汚い人間に思えてきた…)」」

摘んでいた頬を離し、むくれるアゲハの頭をぐりぐりと撫で回す

「チビ子、ちょっとムッツリっぽい弟だが、これからもよろしくな」
「む…ムッツリ…?」
「アゲハ、お兄ちゃん、ちょーっとショックだけど、軽いちゅー以外は15歳になるまでしちゃだめだからね」
「…キスに軽いも重いもあるの?」


いまいち話が通じ合わない

ジェームズやシリウスが話す事は、いつもちょっと理解出来ないと思った

アゲハが頭を悩ませていると、二人は遠くにいるスネイプを見つけ、アゲハに棒付きのアメを手渡してスネイプの所へと行ってしまった

「(男の子と女の子の大人の関係って難しいんだなぁ…)」
「…アゲハ、見つけた。どこにいたの?」
「あ、レグ…私の事探してたの?」
「うん、15時に広間前って言ったよ」
「あ、ごめんね、今シリウスさんとジェームズさんと話してたの」
「……兄さん達…はぁ…唇の傷の事、言われたんだ」
「うん」

遠くでリリーの怒る声と、ジェームズ達の笑い声が聞こえる
アゲハは直にスネイプが虐められている所を見たことが無かったので、いつもふざけているものだと思い、仲良しだなと思っていた


「……ふぅ…」
「どうしたの?」

ジェームズ達の笑い声に気を取られていると、レグルスのため息を付く声が聞こえた

「傷が治るまで、できるだけ兄さん達に会わないよう気をつけて。きっとあの人達の事だから、会う度にからかわれるよ」
「う、ん!わかったわ」

さっきの二の舞になるんだ、と心の中で強く思い、気をつけようと意気込む

「僕も次から気をつけるから、アゲハもキスの時は喋らないでね」
「がんばる」
「うん」

さり気なくレグルスの腕に自分の腕を絡め、普通の恋人がするように歩き出す
二人でいられる場所は限られているから、自然と足がそこに向いてしまう

「今日は天気が悪いから、図書館でお昼寝でもしようか」
「見つかったら怒られちゃうよ?」
「大丈夫!こっそりするの」

悪いことではないのに、悪戯をしようとしている子供のような笑顔が、間抜けっぽく、レグルスは気付かれない程度に小さく唇を引きつらせた

「そう、じゃあ僕は新しい本でも探そうかな……あ、そういえばアゲハ、僕ねスリザリンのシーカーに選ばれたんだよ」
「ほんと!?すごいね!応援するよ」
「ハッフルパフの生徒がスリザリン応援していいのかな?」
「応援するのはレグルスだけ!スリザリンは応援しないの」

きゃっきゃ、とはしゃぐアゲハとは反対に、レグルスは少し浮かない顔をした

アゲハが応援してくれるのは嬉しいけど、その事で他人に非難されないか心配だった

「…僕の活躍で勝敗が決まるんだよ?僕がスニッチを捕まえたらスリザリンの勝利はほぼ決まる」
「んー…じゃあ、誰にも気付かれないように、こっそり応援する」
「それが一番かもね」
「うん、堂々と応援出来ないのは残念だけどね、でもその代わり、レグルスが勝ったらお祝いに私からキスしてあげる。もし勝てなかったら、私の胸を貸して慰めてあげる」
「じゃあ、頑張って勝つよ。楽しみにしてるからね」
「うん!」






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -