迂闊だった

レグルスの前で眠るなんて
机に突っ伏して眠るなんて

癖がついた前髪を抑え、未だに自分を見て笑うレグルスに腹が立つ

「いつまで笑ってるの!もう10分も前の話じゃない!」
「ごめん、まだ髪の毛のクセ取れないの?」
「……ん…取れないわよ」

事の発端はさっきまでいた図書館での事

どこかの寮がクディッチの練習で使っていたブラッジャーが図書館の窓を突き破り、ちょうどアゲハとレグルスが使っていたテーブルに激突したのだ
その衝撃でアゲハは目覚め、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で当たりを見回すアゲハの顔が、レグルスにはツボだったらしい
オマケに寝癖で前髪は変に上を向いていた

「随分気持ち良く寝られたんだね」
「日当たり良かったから…静かだったし…」

少し日が傾き、夕日が照らすオレンジ色の鮮やかな誰もいない静かな廊下をゆっくりと歩く

「そっか、いい昼寝スポットだからね」
「うん。あ、レポート纏められた?」
「完璧だよ」
「良かったね、…ねぇお腹空かない?」

ガサゴソとローブのポケットを漁り、幼い子供みたいにニコニコしながら2本の棒付きキャンディを取り出した

「アゲハ、もうすぐ夕飯だからお菓子は我慢しよう」
「……分かった」
「……」

残念そうに頷き、キャンディをポケットに戻すアゲハが一瞬可愛く見えた

レグルスは自分でも訳が分からず、黙り込んで頭を振るい、それは幼い子供への庇護欲だと慌てて自分に言い聞かせる

「(でも、僕は子供があまり好きじゃない…うるさいし、言うこときかないし苦手だ…)」

もう一度、さっきのが幻覚じゃないか確認のため、視線をアゲハに落としてみた

「……アゲハ…」
「ん?なに?」
「……なんでもない…」
「んー?」

今度こそは、本気で見間違いだったかもしれない
ほんの一瞬、夕日に照らされたアゲハの横顔が美しく、大人びて見えた
でもそれはほんの一瞬で、振り向いたアゲハは幼い顔で、美しいというよりは可愛らしかった

「……視力落ちたかな…」

立ち止まって呟いた言葉は、数メートル先を行くアゲハには届いていなかった

「レグルス、早く行こう!夕食もうすぐじゃなくてもう夕食の時間過ぎてる!ミートパイが無くなっちゃう」
「…はいはい」

やっぱ僕は視力が落ちたみたいだ


幼い子供のようにはしゃぐアゲハを見て、どうしようもないため息が思いと共にこぼれた

夕飯をそれぞれの寮のテーブルで食べ、その後は特に会う予定は立ててなかったので、そのままお互い寮に戻る事にしたが、結局スリザリンもハッフルパフも寮への入り口は地下なので、一応アゲハを寮まで送って行くことにした


「アゲハ、久しぶりね」
「…リリーさん!」

寮の近くまで来ると、リリーが壁に寄りかかりながらアゲハを待っているのが見える
レグルスに簡単な挨拶をしてリリーの元に駆け出そうとした時、後ろから腕を掴まれて引っ張られた

「わっ…!!」
「アゲハ、忘れ物」
「え?」

頬に広がった熱に、頬骨に当たる冷たい鼻先

頭で理解した時にはもうレグルスの唇は頬から離れていて、掠める地下の冷たい風が頬を冷やしていた

「じゃあまた明日、8時には迎えに来るよ」
「う、ん…レグルス、おやすみなさい」

満足げな顔で来た道を戻るレグルスを見送ると、リリーがアゲハの肩を叩いた

「酷いじゃないアゲハ、どうして私に相談してくれなかったのよ」
「リリーさん…」
「アゲハが誰と付き合おうと私は何も言わないけど、なんで寄りによってシリウス・ブラックの弟なのよ」
「……え?」
「…知らなかったの?」
「レグルス、シリウスさんの弟なの?」
「ええ」
「…ええっ!!似てるなとは思ってたけど、純血なんてほとんど血繋がってるし、まさか本物の兄弟だったなんて…」

今まで知らなかったショックでアゲハは驚きを隠せなかった

「…でも流石ブラックの弟ね、昨日からつき合ってるって噂聞いたけど、手が早いわ。アゲハ、まだ何もされてない?」
「あ、はい…手繋いでほっぺにちゅうだけ…」
「良かったわ。でも一つ忠告しておくわね、彼は狡猾なスリザリンよ、挙げ句、あの人の崇拝者の一人だと聞いてるわ。何考えているのかわからないから、あまりのめり込まないように気を付けなさいね」
「ん、気を付ける」
「いい子ね、はいこれあげるわ」

リリーがアゲハに差し出したのはハニーデュークスの新作チョコレートがぎっしり詰まったハート型のボックス
甘いものが大好きなアゲハは、犬だったら物凄い勢いで尻尾が振られているんじゃないかと、リリーが思うくらい喜んでいた

「食べた後はちゃんと歯を磨くのよ。寝る前に食べちゃだめだからね」
「うん!ありがとう!」
「どういたしまして。それじゃもう行くわね」
「ん、リリーさんまたね」

リリーの姿が見えなくなるまで手を振り、見送る
姿が見えなくなった所で足早に寮に入り、早めの入浴を済ませた


濡れた髪をベッドの上でパパっとで乾かし、明日ある授業を確認して今朝早かった分、早めの就寝についた







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