「わかったわ、じゃあ整理すると、新しくできたフィアンセちゃんの家が、例のアノヒトを恐れ始めた上に、落ちぶれた貴族だから、それじゃブラック家の名が廃るから婚約を破棄したいのね」
「そうです」
「だから私にそれが済むまで恋人になってもらいたいのね」
「そうです」

スリザリンのテーブル席の一番端
レグルスの向かいに座り、手振り身振りで今までの経緯を説明するアゲハに、朝食のカボチャジュースを飲みながらレグルスは頷いた

まだ時間も早く、ほとんどの生徒がいないため、不快な視線を感じる事はない

「でも一つ質問いい?どうして半純血の私なの?純血の人とかスリザリンにいるじゃない」
「スリザリン生はだめだ。家の権力に託けてすぐ媚びを売ろうとする。その点、アゲハはこういう話には疎い人間っぽいですし、考えてる時にたまたまあそこに居たからですよ」

チキンを頬張りながら当然でしょ、とでも言うかのような口振りで答えられる

「…つまり、媚びを売ろうとするスリザリン生以外でなら、なにも私じゃなくても…」
「僕に他の寮の人間に頭を下げろと?冗談じゃない。格下の相手になんで頭を下げて頼まなきゃいけないんです?」
「そんな事言ってると友達無くすわよ」
「友人だと思った事ありません」
「うわっ、サイテー」
「あ、ちなみにあなたは僕に借りがありますから、拒むことなんてできませんよ」
「ゔっ…まだ返されてないわ」

ツンと、顔をレグルスから背かせそっぽを向く

「アゲハ、ローブの右ポケットの中」
「…え?」
「ちゃんと入ってますよ。気付かなかったんですか?」

レグルスに言われた通り、ローブの上からそっと右ポケットを触るとゴツゴツした物が入っていた

「……箱に入れてくれたの?リボンまで付いてる」
「ええ、まぁ」
「なんか開けるの躊躇っちゃうね」
「じゃあそのまま保管でもしといて下さい」
「うーん、寮に戻ったら開けるわ」
「…そうですか」

レグルスのさり気ない気遣いに、素直に嬉しく思った
少し早い朝食を済ませると、レグルスは図書館に返す本があるといい、アゲハは私も行くわと二人で図書館に向かった

「わっ、きゃあ!」
「アゲハ!?」

水浸しになっている廊下に気付かず、そこを歩いてしまったアゲハは足を滑らせ転びそうになる
レグルスはとっさにアゲハを引き寄せるが、そのまま後ろの壁にぶつかり、持っていた本が廊下に散らばってしまった

「痛っ…あ、ブラックさん!大丈夫?」
「んっ…大丈夫です」
「背中、頭とか打ってない?」

レグルスの膝の上に馬乗りで座っているアゲハは、大丈夫だと言いながらも痛そうに顔を歪めるレグルスの頭を優しくさする

「保健室に行きましょう、本は私が返しとくわ」
「本当に大丈夫。水浸しの廊下はピーブスの仕業だな…先生に言っときますよ」
「……」
「…アゲハ?」
「…無理、してない?」
「大丈夫だよ」

それでもまだ心配するアゲハの頭をレグルスは優しく撫でる
すると飛びつかれ、きつく抱き締められた

「良かった…でも念のため保健室には行こう?」
「本を返した後でね」


仲睦まじく笑い合い、散らばった本を集める二人を、唖然とした面持ちで見ていた人物がいたのを、二人は気付けなかった





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