内緒のキスをちょうだい


 
 俺の好きな人は太陽みたいなやつだと思う。いつも笑顔で、みんなを光へ導いてる、そんなやつだ。

 あいつとあいつの周りの凄いやつらを見てると、なんで俺なんかを選んだんだろうって考えてしまう。

 俺――半田真一はどこでもいるような普通な中学生。それで太陽みたいなやつ――円堂守の恋人だ。


「あれ。半田?」

 日直ですっかり遅くなった帰り道を歩いていると後ろから知った声が聞こえた。俺が反応しないでいると相手は俺のもとに駆け寄って肩をポンと叩いた。

「……円堂」

「あ、やっぱ半田だ。なんだよ返事しろよー。もしかして違うやつかと思ったじゃん」

 そう言って笑う笑顔はやっぱり太陽みたいだ。

「半田、今帰りか?」

「あぁ」

「俺、今日、数学の小テストの補習、ひっかかっちゃってさー。豪炎寺たちは先に帰っちゃうしさ。でも半田に会えてよかった。そういえば半田も補習?」

「違ぇよ。俺は日直で雑用やってただけだ。だいたい、補習ならとっくにあってるだろ」
 
 
 円堂と二人きりで話せて、一緒に帰れてすごく嬉しいはずなのに、心のどこかでモヤモヤとするものを俺は感じていた。

「半田。なんか元気ないけどどうかしたのか」

「あ、いや……円堂は凄いなって。なんか太陽みたいで」

 小さく「なんで俺なんか選んだの」と呟くと円堂が俺を力強く抱きしめた。俺は突然のことに驚くがそれが嬉しくて、抱きしめかえした。

「俺なんかすごくない。だって……あの時の風丸のこととか、半田たちのこと、なにもわかってなかった!」

 あの時とはついこないだのあのことを言っているのだろう。俺は「ごめん」と呟いた。

「俺なんか、なんていうなよ半田。一年の時、このまま秋と二人だったらどうしようって思ったとき、半田と染岡がきてくれて、すげー嬉しかったんだ。それから半田のその優しいとことか、周りをよくみてるとこに惹かれて……だから! なんかっていうのはやめてくれよ」

「円堂。俺……」

「半田っ」

 俺はこんなにも不安にさせてたんだ。太陽みたいなやつ、って思ってたけど、太陽にだって――。

 俺だけじゃなかったんだ、その事実に心にあったモヤモヤが晴れていく、そんな気がした。

「ねぇ、円堂。キスをちょうだい?」

 キミの愛がなによりの薬だから。
 

キャプテンは旦那様


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