無題


夜、なんだか寝付けなくて俺は外に出た。
そよ風が気持ちいい。
月を見ながら涼しんでいると、誰かの気配を感じた。
「誰だ!」
武器を構えて振り向くとそこに居たのは幸村だった。
「なんだ、旦那か…」
「なんだって…それより何をしておるのだ?」
「ちょっと、寝付きが悪くてね。旦那は?」
「俺は…佐助が出て行くのが見えたから…」
後をつけてられてたのか…。
ふう、と溜め息が出る。
(仮にも忍者なんだがなあ…)
「どうしたのだ?…もしかして、迷惑だったか…?」
「いや…ただ、旦那には敵わないなあと」
「???」
訳が分からない。そんな顔で見て来る。
「まあ気にしなくていいよ」
頭をぽんっと撫でる。

「〜〜〜子供扱いするなっ!!」
その行動が気に食わなかったのか、幸村は怒鳴った。
「どうしたのよ?」
いつもの幸村なら喜びそうなのに。
佐助はそう思った。
「俺は…お前とは対等でいたいのだ…!!」
幸村は佐助の胸倉を掴み顔を近付ける。

ちゅ。

佐助は軽く掠れるぐらいの口付けをされた。
「旦那何を…」
「俺は佐助の事が…、す…好いておるのだ…」
「………」
いきなりの口付け。
いきなりの告白。
「すまん迷惑であったな…」
無言だっただからだろうか、自分がした行動に後悔と申し訳なさが重なって、少し震えた声で幸村は言った。
「旦那俺は…」
「最後まで言わなくても分かって…」
「分かってない!!」
幸村が最後まで言う前に佐助が叫んだ。
「俺だって旦那の事…好、きなんだ…」
忍者でありながら人を好きになってしまった。
面に出してはいけないと思えば思う程
この男に、真田幸村に惹かれていく。
そんな自分を押し殺して今迄過ごして来たのに、幸村の行動でそのタガが外れた。

「佐助…」
「旦那…俺にこんな事言わせたんだ。責任、取ってくれよ?」
そう言って佐助は柔らかく微笑んだ。
その姿を月明りが照らし、幸村に良く見えた。
「勿論、幸せにする」
幸村も微笑んだ。


その後の二人は、綺麗に輝く月だけが見ていた。



END

2006年に友達に送った小説を見つけたので少し直して載せてみました(笑)










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