衝突するストーカー

ひぃふぅみぃ…何人やろ。

ぱっと数えてみた限りだと5人。
中央最前に位置している女子はもういかにもって感じで、じゃらじゃらとアクセサリーを付け可愛らしく色づけされたネイルが伸びる指を、派手な柄のシュシュで高い位置でまとめられているこれまたド派手な金髪に染め上げた髪に絡ませていた。

典型的やなこいつ…。
若干引き気味に彼女を見ていたら、その視線に気を悪くしたのか睨まれた。

「みょうじさぁ、赤司くんといたよね?」
「はぁまぁさっき偶然遭遇したんで…」
「マジ調子乗りすぎ。途中からバスケ部のマネになるとかありえないし」
「赤司様目当てなんでしょ!?」
「近づくなって忠告したばっかりだよね?」

ふむふむ、あの熱烈なラブレターの送り主は彼女らなのか。
いやぁ、モテるのも困りものやなぁ!

とかそんなことを考えながら、愛らしい少女の小さなお口から紡がれたものとは思えないほどの汚い言葉が矢継ぎ早に繰り出される。
大丈夫かなぁ、私の後ろに黛先輩おんねんけど。

「聞いてんの?ブスがいきがってんじゃねーよ」
「ただのガリ勉のくせに、赤司様とどうにかなれると思ってんのかよ」
「赤司様がかわいそう…」

ただ黙って彼女たちの言葉を受け入れながら、ちらりと私の後方にいる黛先輩を盗み見てみるとなんとも形容しがたいお顔で彼女らを見ていた。
うん、気持ちはわかりますよ。
はぁ、と小さく溜息を吐いたら、痺れを切らしたのか例のド派手な女子の手が私の髪に伸びてきて。

「い、った…」
「何溜息とかついてんの?何様だよ」
「うちらが教育してやるよ、二度と赤司様に近づけないようにしてやるわ」

赤司様ったら熱狂的なファンをお持ちやね!本当あんな魔王様のどこがええねんあぁ髪痛い!

「その辺にしとけ」

ぐい、と、強めに髪を引っ張られたところで、気怠そうな柔らかい声が聞こえた。
声の主は黛先輩ってことはすぐにわかったんだけどまさか助けて下さるとは思わず驚いて見上げてしまった。

後方で本を読んでいたはずの先輩は、今まさに私の髪を掴んでいる女子の腕を掴んでいる。
突然の第三者の乱入に彼女たちも驚いていて(最初からいたけどね!)、一拍置いてから私の髪が解放された。

一番大人しそうな子が慌てて扉に向かって行ったのを皮切りにバタバタとみんなで仲良く屋上を後にするのを見てから黛先輩に声をかけた。

「あの、なんかごめんなさい」
「なんで謝るんだ…やっぱり赤司絡みなんだな」
「うーん、まぁそんな感じなんですけど…」
「…赤司は知ってるんだろ?」

乱れた髪を整えながら曖昧に返事を返していると、またしても屋上の扉が開かれる。
今度は女子ではなく、赤い髪の魔王様がその扉を開けたようだった。



(あぁ…取り込み中だったか?)
(は!?ちゃうし!なんもないし!)
("何か"はあったけどな)
(そうか、よく頑張ったななまえ)
(誤解を招くような言い方やめてください黛先輩!)


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