遅延のない世界

『ぷそこ:シエラさーん』
『シエラ:ぷそこさんと征さん!?ログインは控えてくださいって言ったのに!』

インしてすぐにチームチャットに発言してみると、すぐに通信が返ってきた。
焦ったように言われたのでごめんなさい、と二つ返事をしてから事情を説明すると、艦橋に転送されてしまった。

『シエラ:大丈夫なんですか?他に影響は?』
『ぷそこ:ううん、痣が出来ただけなの。痛くもないし、ちょっとだけ違和感があるかなぁって程度』
『シエラ:なんでしょう…?こちらのアバターには何の影響も出てないみたいですし、アイアンウィルはHPが0になる攻撃を受けてもHPを1だけ残して死亡を回避するスキルなので実態に影響が出る条件は満たされていないはずなのですが…』

そう言いながらシエラさんは端末を操作していろいろ調べてくれているみたいだ。
カスラさんにも連絡してくれるらしいけど、思いのほか大事になってしまっているようで申し訳ない気持ちになった。

『シエラ:征さんの方は何か変わったことはありましたか?』
『征:いえ、全く何も。肉体の方にも、精神的にも一切症状は出ていません』
『シエラ:ふぅむ…ぷそこさんだけに現れた理由が何かあるのでしょうか?』

メガネをかけてるシエラさんかわいいなぁって思いながら端末を操作する姿を眺めていると、首を傾げながらこちらをまじまじと見つめてきたのでちょっと恥ずかしい気持ちになる。

『ぷそこ:でも赤司くんと私の違いって言ったら、あの拉致された時にファンジに捕まったことくらいじゃない…?』
『征:実際オレも何度か死にかけたからな…アイアンウィルも一度発動したし』
『ぷそこ:そういえばあのファンジもちょっとおかしかったよね、高尾くんを捕まえようとしてたのに、瞬間移動して私の方にきて…』
『シエラ:なんですって!?』

バンッ!と大きな音を立ててシエラさんが立ち上がったと思ったら、こちらに駆け寄ってきたので赤司くんもびっくりしていた。
もちろん私もびっくりしたので目を見開いてシエラさんを見つめ返すと、心底焦っている様子。

『シエラ:そんな事あり得ないんです!ファンジは最も近くにいるアークスにしか反応しませんし、ファンジとターゲットのアークスの間に入らない限りターゲットが変わる事はあり得ません!』
『ぷそこ:え、遅延とかとかじゃないの…?』

そこまで言った所で、そういえばこの世界はシステムで構築されたゲームの世界じゃないんだったことを思い出す。
あんまり気にしてない事だったけど、かなり重大な事らしい。

つい無意識に赤司くんの手を握ってしまったら、赤司くんの手が少し震えていた。



(どうしよう、すごい怖くなってきた)
(でも、ファンジってそんなやばいものな印象ないんだけど)


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