「ご機嫌よう、静ちゃん」ある日ノミ蟲が宙に立っていた。塀も杭も何もない空間にしゃっきりと二本の足を着けていた。「なあに?静ちゃんたら変な顔して」くすくすと可笑しそうに笑う表情はいつものものなのに遥か遠い。もう手は届かないのかもしれない。絶望にも似た悲しみが視界を黒く塗りつぶす。黒の中でも彼は宙で笑っていた。




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