私は…。

生まれたときから、自分が何者なのか全くわからない。
誰かに必要にされたことなどなく、息をし、自分の勤めを果たす。
母親と父親は早くに死に、母の姉が私を引き取って育ててはくれたが、子育てというには事務的なもので私の存在などこの家にはない物として扱われた。

18歳、夏。
伯母が珍しく鼻歌を歌い、赤飯を炊いた。
「審神者通知が来た」
引き取られたときから神職である叔母の旦那は私に修行を刺せ続けていたが、これか。
案外あっさりと自分の運命とやらに納得した。
目の前に置かれた赤飯と、凝った食事。
笑う伯母、悲しむ義理の妹。
そうかこれが最後の晩餐。
私は生まれたときから、いや、この人に引き取られたときから審神者になるために育てられ、国へと売られたのか。

19歳になる、春。
高校を卒業し、政府から収集がかかり私は思い出のない古びた家を出て行った。
唯一泣いた義理の妹を見て、私は何の感情もわかなかった。
そこから2年の間、審神者なるモノへとなるために講習を行い、ついにそのときは来てしまう。

案内された部屋で、私は、この運命を呪うことになるとは微塵にも思っていなかった。