さーんにーいーち(トド松)
!10話のネタバレ有り

久しぶりに学生時代の友達とショッピングモールにやってきて服を見たり靴を見たり雑貨を買ったりしてた、今度はトド松と来て選んでもらお、と心の中で考えながらエスカレーターに友達と乗った時に目の前に見覚えのある服装の男が見えた。

「トド松…?」
「げっ!!なまえちゃん!?」
横に連れてる小さくて可愛らしい女の子を上から下まで睨むように見る。ふーん。っていや、女の子に非はないだろうからこんな性格悪い女みたいなことやめよ。ニコッと笑った。

「デート?ごめんね声かけて」
「ちちちち、違っ!違わないけど違うから!!!」
「よくわからないけど違わないんでしょ、おっけー」
「全然おっけーじゃない!!ちょっと待って!待ってってば!!」

えっちょっとぉ!っと横の女の子が静止をかけて止まる。友人が気まずそうに私の様子を見るからなるべく笑顔で「よくあることだから気にしないで」と言った。
よくあってたまるかって話だけど。


あれから数日間連絡がなくて更に腹が立った。あのヤリチン風味のクソ童貞、次会ったら絶対殺す。首締めてやる。イライラしながらカフェの窓際でぼんやりと外を眺めた。なんとなくカフェなら仕事が捗るかなって休みの日だから思ったんだけど…。目の前に先程まで殺したい程のイライラ原因を作った男がおしゃれをしてきょろきょろと周りを見渡していた。

「(ほぉ〜またあの子とデート?)」

童貞卒業させた事を後悔している。あんなヤツならヤらなきゃよかった。ムカムカと腹が立つと同時にバチッと目が合った。目を丸くして店の方へと駆けてくるトド松にイライラは募るばかりだ。


「ごめんなさい!!!」
「…一応聞くけど浮気でしょうか」
「なんで敬語なの!!あっ、…ち、違います…」

ギロッと睨むと縮こまるように身を小さくするトド松。情けない。

「では質問を変えます。あの子はなんですか」
「兄さんたちが面白がって呼んだレンタル彼女で…」
「レンタル彼女ぉ!?」
「ひっ」
「ここに!彼女がいる癖にレンタル彼女ってどういうこと」
「いや、あの、だから兄さんたちがね面白がって…」
「兄さんたちが、兄さんたちがってアンタ凄い楽しんでたよね?何買ってあげたの?いくら使ったの?ほら言ってみ、さーんにーいーち」
「ほんっとにすみませんでしたっ!!」

店内だっていうのに床に土下座をするトド松が額を地べたにくっつけて謝ってきた。

「うんうんトド松…私はね、浮気かと思って怒ってたの。レンタル彼女って聞いて少しホッとした」
「じゃ、じゃあ」
バッと嬉しそうに顔を上げたトド松の顔面のすぐ近くでニコッと笑った。

「とでも言うと思った!?なに!?私に不満でもあるの!?」
「滅相も無いです!!1つも無いです!!!!」
なまえちゃんが世界一可愛い!世界一大好き!っと半ベソかきながら言うトド松の顔を見てたらなんだか呆れてきてしまった。

「はぁ…」
なんで私こんなヤリチン風味のクソ(元)童貞ニートと付き合ってるんだろ。ため息にビクッと身体を震わせたトド松に声をかける。

「別れる」
「えっ」
「なんか凄い虚しくなってきた」
「そんなこと言わないでよ、僕なまえちゃんに本気なんだよ!」
「でも浮気した」
「あの子は本気じゃないっていうか…」

そうじゃなくて、と言うか否やで悩んでいたのかもごもごと目線を泳がせるトド松。

「どうせえっちしたんだ…」

これしてたら本気で速攻別れる。そこまで優しく無いし私。性病移されても困るし無理。

「してないよ!ていうかあれチビ太だし」
「は…?言い訳にしては苦しくない?」
「…話すと長くなるけど聞いてくれる?」
「…最後になるかもだから一応聞いてあげる」

渋々席に座り、トド松の話に耳を傾ける。大体の経緯が分かり、騙されてあんなに金を使っていた、本気で好きになるわけない、チビ太とわかって寒気がした、と言うトド松を睨みながらトントンと指先で机を叩いた。

「以上?」
「以上です…」
「結局チビ太って気づかなかったら好きになってんじゃん」
「好きにはなってないってば!可愛いなって思っちゃっただけで!好きなのはなまえちゃんだけだよ本当に!」

必死にフォローするトド松に本日何回目かわからないため息を吐いてもういいよと声を出した。

「トド松の言い分は分かった。今回はしょうがなかったってことにしとく」

パァッと花が咲いたように嬉しそうな顔をするトド松。すかさず睨み、バンっと人生で1番の力で机を叩いた。
「次似たようなことあったら、チンコ潰すから。一生使えなくしてやる」
「ひっ」
「あっ、でも別れたくなったら言ってねちゃんと好きな人出来ましたって。私が許さないのは並行することだから」

ニコッと笑いトド松はガタガタ震えながらすみませんでした…とまた深々と頭を下げた。ビビりで本当はヘタレ、嘘が少しだけ上手くて性格ねじ曲がってるトド松のこと、好きになった私が悪い。
まぁ今後はしないって話を信じてあげますか。


さーんにーいーち。
(「なまえちゃんが一番だからね!」)
(「じゃあ今度私ともショッピングモール行ってね」)
(「!!!もちろん」)