なみだうさぎ(三月/i7)
きらきらと、単純に星のように思えた。
小さい体にエネルギーが無理やり入って今にも爆発してしまいそうな感じ。
周りの6つの星に負けないほど、私が望む星はきらきらと輝いて、私の目はそらせなかった。
「なまえ!」
「おかえりー」
アイドリッシュセブンのメンバーが住んでいる寮の近くにわざわざ借りたオートロックのマンション。
ライブの後、打ち上げとかいろいろして三月が帰ってきたのは日付が変わって2時間ほど経ってからだった。
いつもより慌ただしく開いたドアと、響く声に「(今日はとても酔っているな)」となまえは苦笑いをする。
「ライブどうだった?」
「最高だった!」
「へへっ、だろ!」
嬉しそうにニィっと笑った三月が間をあけてしゃっくりをし始める。
「お水持ってくるよ、お風呂どうする?」
「ちょっと寝てから入りたい」
「はーい」
座っていたソファから降りて冷蔵庫から水を取り出しコップに注ぐ。
本人を目の前にするとまともな言葉で褒められないのが可愛くないなと思う。
水を片手にリビングへ戻ると、三月が先ほど私が座っていたソファーの前に仰向けで寝ころび飼い猫を抱き上げて喋っていた。
「ライブ中のなまえすっごいキラキラした目でステージを見上げてるんだ。俺のファンって少なくてさ、橙色のペンライトそんなにないからなまえがキラキラした目でペンライト振ってるのすぐわかるんだよ」
にゃー。三月によく懐いている猫は抱っこされながらも興味のなさそうに鳴く。
「アイドルが言う言葉じゃないけど、俺愛されてるなぁって思うんだよ」
嬉しそうに笑う三月にこちらまで顔が赤くなってしまう。
「…三月…聞こえてる」
「聞こえるように言ってんだって」
「そんな技どこで覚えたの…憎き二階堂大和さんから?それともTRIGGERの八乙女楽とか?!」
「おっさんと八乙女のことそんなに嫌いだったっけ…ほら来いって」
「別に嫌いじゃないけど…」
コップをソファー前の机に置くと、三月が仰向けのまま手をひろげた。
「重いよ?」
「なめんなー!」
仰向けの三月にダイブし胸元に顔をうずめる。お酒で温められた身体はいつもより熱くてこちらまで熱くなりそうだ。
優しくて暖かい手が私の頭を撫でて心地よさから目を瞑る。
「なまえは、さ…」
「うん」
「俺のこと好きだよな」
「もちろん、当り前だよ」
撫でていた手が止まって、ぎゅっと肩を抱きしめられる。
「俺、取柄なんて喋ることしかないじゃん。でもさ、やっぱり歌って踊ってアイドルしてる時なんて本当にうれしくてさ。
きっとアイドルの俺なんて誰も求めてないかもしれないけど、それでも俺はアイドルでいれて…アイドリッシュセブンでいれてよかったって思うんだ」
「馬鹿だなぁ三月は…」
きらきらと強くて眩くて小さな星が溺れそうになったら、すくって元の場所に戻してあげるからね。
ふと気づいたら寝息が聞こえて、寝顔を見つめれば少しだけ泣いた目をしていた。
「(うさぎみたいだなぁ、なんて)」