01.松野おそ松の独話

01.松野おそ松の独話

松野おそ松は独り、いつも心の中で語る。彼には5人の同じ顔をした兄弟と、たった1人の妹がいる。たった1人の妹は2個下で自分たちには全然似てない可愛く利発的で、聡明で…とにかく賢かった。そんな妹を明るみに出ないよう、暗い世界から逃がさないよう俺達六つ子は彼女へすがりつく。

「あれ、おそ松兄さんだけ?」
「おーなまえ〜」
煙草の匂いとガチャガチャと煩い狭い空間で妹のなまえが声をかけてきた。手に煙草の箱があり、ここにいたということは打っていたということだろう、珍しい。
「なに、煙草吸いに行くの」
「うん、今日はもう稼いだからいいかな。席確保しといたけど行く?」
「さすが俺の妹!出来る子!!」
立ち上がって抱きしめればニコニコ笑ってやったあと喜ぶ、嗚呼神様こんなに可愛い子が妹だなんて感謝してもしきれない。出ない台は捨てて一緒にタバコを吸いに行くことにした。

「珍しいななまえが1人でパチンコに来るの」
「起きたら家に誰もいないから、誰かしらいるかなって来たの」
そしたら出そうな台あったからつい、照れ笑いをするいじらしい妹の頭を空いた手で撫でる。
「じゃあ兄ちゃんが勝ったら今日は2人で飲みに行こうな!」
「うん!」


妹が可愛くて仕方ない。
学生時代にそれを言えば、シスコンだなぁ松野は。って言われたけどシスコン?そんなもんじゃない。家族に向ける愛情なんか向けたことないよ妹に。1度もな。そう言いたくてでも柄にもなく黙った。今だって勝った金でぱくぱく美味しそうにダシの染み込んだ大根を食べてる妹の開く口を見て欲情してるんだぜ?それがシスコンで済むの?それなら俺すごい正常じゃない?なんてもうだいぶ昔に正常じゃないことくらい知ってるけど。
「そんなに旨い?」
「うん!おそ松兄さんも食べる?」
あーん、だなんて大きな大根を1口分に切って口元に持ってくるからぱくりと食べれば満足そうに顔をゆるます。
「お前ら兄妹なのによくまぁやるよな」
「うるせーよチビ太!ぜってぇなまえはやらねーからな!」
「きゃー!お兄ちゃんかっこいい!」
「誰も欲しいなんて言ってねーよバロー!」
お兄ちゃんかっこいいだって、ぎゅっと腕に絡みつけられた身体が柔らかくて気持ちいい。なんかムラムラしてきた。
「なまえお腹いっぱいになった?」
「うん」
「じゃあ次行こう」
「えっ、…あーうん…」
これ今日のね、と机に何枚か札を置いてなまえの肩に腕をかける。後ろから釣りはツケの方から引いとくからな!とチビ太が言ったのも聞こえなかった。次行こう、と言った時の妹の全てを察して欲情した目が俺は堪らなく好き。女の顔になる妹が可愛くて仕方ない。

適当なホテルに入って鼻歌を歌いながらシャワー浴びてくるね〜という妹に声を返してソファに座って煙草に火をつけた。テーブルに置かれたなまえと俺の携帯のロック画面にはチョロ松から遅くならないようにね、と映ってあって兄弟揃って頭おかしいと心の隅で思った。
「おそ松兄さんシャワー浴びる?」
「どっちがいい?」
「フェラするならシャワー浴びて欲しいなぁ」
「へーい」
バスローブに身を包んで出てきた妹からふんわりと柔らかくてさっぱりとした男物の香水の匂いがした。随分昔に兄弟で決めて買った香水は男物で、外で手をつけられないようにマーキング代わりにみんなで買ったやつだ。

シャワーを浴びて部屋に戻るとなまえがベッドで携帯を弄りながらうーんと唸っていた。
「どうした?」
「明日カラ松兄さんからデートしようって言われてるんだけど起きれるかなぁって」
「アイツ…まぁいいや。大丈夫だろ〜なんなら起こしてやるから」
「一番起きるのが遅いのによく言うよ〜」
クスクス笑うなまえの口に唇を押し付けてそのまま押し倒す。ギシッと音を立てたベッドが安物なのは見て思ってたけど改めて聞くと扇情的でニヤける。
「っふ…んっ…、っおそ松兄さんって待てできないよね」
「犬か俺は!ってなまえも待てできないじゃん?」
ぷっくりと形を主張する胸の突起をつねれば小さく漏れる声に唇を舐めた。目の前で欲情してる女と欲情してる男がいたらさ、兄妹なんて壁無くない?兄妹なのによくやるよな、なんてさっきのチビ太の言葉が頭をよぎってなんとなく舌打ちをした。

行為が終わって寝てしまったなまえの髪の毛を撫でてとても悲しくなった。