俺が死んだら、綺麗に食べてくれないか。
そんなことを男が言った。
いつもながら唐突に気持ち悪いことを言う男だ、と口から発した台詞とは似合わないほどの優しいセックスをした男は達した後に横に寝転がり私の唇を指先で弄ぶ。

「カニバリズムの趣味はないんだけど」
「いつどうなるかなんて分からないから埋葬方法でも伝えておこうと思ってね」
「埋葬じゃないじゃん」

気持ち悪い。そう言えばいつもみたいに笑って、すぐに悲しい顔をした。

「どうしても食べて欲しい。一部だけでいいから」
「じゃあ私が先に死んでも食べてくれる?」
「それじゃあ意味ないな」
「…意味がわからん」

むにむにと唇やら頬を触られて煩わしさを感じながらも、触れるたびに温かさを感じる指先に、口元が緩んだ。起き上がったメローネがシーツを勢いよく引っぺがす。

「ちょっと!!」
寒い!なんてそんなことはないんだけど、笑いながら言った。メローネは私のお腹に触れるだけのキスをして慈しむように腹を撫でる。

「くすぐったい」
「…女性の、胎内は神秘的だと思うんだ」
「…スタンドを私に使うの?」
「そんなワケないだろ」
突然真面目に話しはじめるもんだから何を言うのかと首を傾げる。温かい手のひらが腹を撫でて、ふぅと息を吐いた。

「俺の一番のワガママだから」
お願いだから俺を食べて。
「…いつもワガママでしょ」
「…それもそうだな」
2人で笑って布団に潜り込んだ。

メローネ、アナタが漠然と考えていたこと私には少しわかったよ。あなたが死んだら骨も残さず食べてあげる。そして私の元に還ってきてね。

(腹なら回帰⇒メローネ)