リクエスト:周りにさりげなく威嚇するところが見てみたいです
※プロシュート視点


例えば自分のものがそこら辺で勝手に使われるのは気にくわない。誰だってそう思う。勝手に歯ブラシ使われてみろ、最悪だ。歯ブラシなら捨てりゃあいい話だけど、世の中捨てられねェものはあるし、食べ物みたいに食べたら終わりなものも存在する。じゃあそういうのをどうすれば手を付けられないと思うか、ペッシに聞けば「名前を書くとかですかね…」と返ってきた。

「ペッシよォ〜名前を書いたところで、ソレを必要としてる奴に使われたり食べられたりしない確実性なんてねェよなぁ」
「えっ、そう言われればたしかに…」
「だろォ?じゃあどうすればいいのかって話だ」
「そうですね…兄貴が手付けられたくねェってヤツがあるんスか…」
「ああ?俺にも1つや2つ譲れねェモンはあんだよ」
アジトのドアを勢いよく開いてズカズカと広間へ入ればソファに座り雑誌を読んでいた女と、その横に座って何かを熱弁しているメローネが居た。座っているソファーの背もたれに足を押し付ければ「うっ」と男の方からうめき声が聞こえ振り返るので睨んだ。

「げ、プロシュート」
「おう、退け。ソコ俺のだ」
「…帰ってきて早々にソファー蹴るのよせ、ばっちいぞ」
「リゾットは黙れ、俺はコイツに言ってんだ」
親指でメローネを差せば不服そうな顔をして渋々立ったメローネの席に座る。隣で雑誌から視線を離さないナマエが「おかえり〜」と気の抜けた声で言った。タバコに火を付ければライターの音で気づいたのか灰皿をテーブルの端から引っ張って俺の前に置く。
「悪ぃな」
「いいえ〜」
あくまでも視線は合わない女に少し不服さを覚えながら、リゾットに先ほどの仕事の報告をしているとナマエが立ち上がりキッチンへ向かったのが見えて声をかけた。
「コーヒー頼む」
「はーい」

しばらくしてカップを3つ持ってきた彼女がリゾットと俺の前、そして自分の前に置いた。
「ああ、すまないなナマエ」
「いいえ〜」
「…なんでリゾットの分も持ってきてんだ」
「なんでって…別に2人が話してるからいるかなと思っただけだけど」
隣に座ってまた雑誌を手にしたナマエに言えば、きょとんとした顔で俺を見ながらそう言う。俺はたしかにコーヒーを飲みたいからナマエに頼んだが、リゾットは別に頼んでないだろ。不服に思いながらコーヒーを口に運べば、はぁとリゾットのため息が聞こえて呆れ返った顔をしていた。
「なんだよ」
「…少しはそういうのを隠せプロシュート」
「あぁ?ムカつくのは仕方ねェだろーが」
「…」
なんだよその顔はよ。

隣に座っているのに冷たくされている気がする。ナマエの肩を掴んで引き寄せれば、俺に倒れ込んで目を丸めて見上げられた。視線があって瞳には俺がくっきりと映っていて口元が緩んだ。
「なに?」
「理由がないと抱き寄せちゃあダメか」
「だめじゃないけど…この体勢は雑誌読みづらいし」
「知るか」
渋々と「わかった」と言って雑誌を机に放り投げ大人しく肩へ寄り掛かり目を瞑るナマエに満足して額にキスをする。席を移動させて向かいに座っていたメローネが引きつった顔をした。

「うらましいか?やらせねェけどな」
「別にしたいなんて言ってないだろ」
ちゅっともう一度キスをすればナマエまで呆れたような顔をして、俺の頬を両手の指先で摘んだ。痛ェ。
「そうやってわんちゃんみたいにきゃんきゃんしないの」
「犬だと?お前誰に言ってんだ」
「プロシュート」
名前を呼ばれてじっと見つめられれば、怒った顔のナマエが眉間にシワを寄せていた。…怒ってても可愛いじゃねェか。そのまま手を頭の後ろに回して、唇にキスをして舌をねじ込めば、目を見開いて俺の肩を押してくる。まぁ力の差で離しはしないが。
「っ…ぁ、」
口を開いて吐息を漏らしたのを見てから歯列をなぞって口内を荒らす。数秒間唇を味わってリップ音を鳴らして満足感から離れれば肩で息をするナマエ。
「え…ここでソレやる?本気?どういう神経?」
「…メローネ、理解しようとしなくていい」
リゾットのため息混じりの言葉に睨めば「そう睨むな」と言われた。ナマエが俯いてるのを見ながら上機嫌にタバコを出して火をつけようとしたところで、頬に衝撃が走る。
「っ!?」
「ほんっと、最低!!」
俯いていたナマエが立ち上がり部屋を出て行ったのを見て、メローネは爆笑するし、リゾットは眉尻を下げて困った顔をした。今、あいつなんて言いやがった?つか今何した?

「あっはは!最高だなナマエ!プロシュートがビンタされるのを見れるとか最高な気分だ!」
「メローネお前うるせェぞ!」
「早く謝りに行った方がいいぞ、プロシュート」
「…なんで俺が謝んだよ」
ソファーに落ちたタバコを拾い火を付ける。信じられないと言った顔で俺を見たメローネが「普通にあんな声と状況を他人に見られたら嫌だろ」と言って思わず目を丸めた。

「お前……そういう感性持ってんだな」
「今のプロシュートにだけは、言われたくない言葉なんだけど」
周りに無意識にそうやって警戒するのやめな、と言ってアイツが置いていった雑誌を拾い開き見始める。警戒?ちげぇな、わからせてやってるだけだ。煙と一緒に息を吐いて、天井を見つめた。


「…なんの用」
キッチンに逃げ込んだらしいナマエがお湯を沸かしながらタバコを吸っていた。目線を合わさずに白い煙を吐けば、煙はゆっくり換気扇へ流れていく。ご機嫌が斜めなのは変わらないらしい。めんどくせェことになった。近づいて、ナマエの寄りかかる壁に手をついて顎を持ち上げてキスをする。ちゅ、と音をさせて離れればぶすっとした顔で俺を見上げた。
「…キスしたからって許すと思った?」
「…俺は悪いとは思ってねェからな」
「あのねぇ…」
はぁ、とため息をついて頭を抱えタバコを灰皿に押し付ける。そのままその手が伸びてきて頬に触れてきた。
「先に言うね、こんな綺麗な顔を叩いたのは謝る。でもリゾットやメローネが見てる前でああいうのはやめて、みっともないから」
「みっともねェだと?お前に隙があるのが悪いんだろ」
メローネを隣になんて座らせやがって。そう言えば目を丸めてからくすくすと笑い始める。
「ヤキモチ妬いてるの?プロシュートが?」
「調子乗んじゃねェ、周りに分からせてるだけだ」
「…でもみんなの前でディープなのはやめてよね」
「…考えとく」
顔が近づいてきて触れるだけのキスをされた。言いくるめられた感も否めないが、ペッシの言ってた通りに意味がなくても名前でも一応書いとくか。